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  1. AIでコードを書くのが簡単になったあと OSSはどう続いていくのか(CSS2026 OWS研究会) 2026年10月21日、コンピュータ・セキュリティ・シンポジウムCSS 2026で、Trivy作者のTeppei Fukudaさんによる「OSSとAI」という招待講演を聴いた。Trivyは、コンテナイメージなどの脆弱性や設定ミスを調べる脆弱性対応の分野では世界1著名なスキャナーだ。 trivy.dev 公式プログラムにもあるとおり、講演ではAIがOSSの参加方法や保守、コミュニティに与える変化が扱われた。 コードを書けるようになることと、そのコードを引き受けて保守できることの間には、まだ大きな距離がある。 AIによって実装の速度が上がったとき、その先にいるメンテナーの仕事はどうなるのか。利用者が増えたとき、改善や感謝、収益は作者へ戻ってくるのか。講演を通じて考えたのは、この二つだった。 報告が増えると受け取る側の仕事も増える 講演の前半では、AIによって増えるPRや脆弱性報告を、メンテナーがどう受け止めているかが語られた。 AIがコードを調べて問題を見つけ、報告文を整えてくれる。提出する側からすると、以前より少ない労力で貢献できるように見える。しかし、受け取る側には、報告を読み、再現し、影響を判断し、修正の必要性を確かめる仕事が残る。 しかも、負担になるのは誤報だけではない。同じ問題を、別々の人が似たツールで見つけ、何度も報告してくることがある。 脆弱性報告では、修正や公開時期を調整するために、非公開でやり取りすることがある。その場合、後から報告する人には、同じ内容がすでに届いているのか分からない。報告者同士には見えない重複が、メンテナーの手元に集まる。 TeppeiさんはTrivyでもこうした負担があると紹介していた。講演以前の公開Discussionでも、AI生成とみられる類似の報告が大量に届き、確認や分類に時間がかかると説明している。Linuxでも、Linus Torvaldsが2026年5月のリリース告知で、同じツールによる重複報告と、非公開であるために重複を避けにくい問題に触れていた。 さらに、Teppeiさんの判断では脆弱性に当たらない報告が、CERT/CCを経由して届いた経験も紹介された。なぜ脆弱性に当たらないのかを説明し、取り下げを求める調整にも時間がかかるという。CERT/CCには初回報告から原則45日で公開する方針があり、事情によって前後するものの、期限のある対応は受け手にとって重い。 報告を生成する時間が短くなっても、受け手が判断を終える時間まで同じように短くなるとは限らない。提出する側から見た効率化が、別の人の作業を増やすこともある。 受付の仕組みにも変化が出ている。GitHubは2026年10月1日に、非公開脆弱性報告の日次制限や、信頼する報告者の許可リストを導入した。 多くの情報を集めるために開いてきた入口を、受け手が対応できる形に調整する必要が出てきている。 OSSを支えてきた二つのフィードバック ここから、話はOSSのコミュニティそのものへ広がっていく。Teppeiさんは、OSSには二つのフィードバックがあると説明していた。 一つは、ソフトウェアが良くなるためのフィードバックだ。誰かが使い、不具合を見つけ、報告や修正を送る。それが元のプロジェクトに取り込まれ、ほかの利用者も改善の恩恵を受ける。 もう一つは、作り続ける動機につながるフィードバックだ。使っている人から感謝される。記事で紹介される。自分の知らなかった使い方を教えてもらう。そうした反応から、誰かの役に立っていると分かる。 この二つを分けて考えると、AIによる変化が見えやすい。 たとえば、使っているライブラリに足りない機能があったとする。元のプロジェクトに相談して修正を送るほかに、必要な部分をコピーし、AIを使って自分の用途に合わせて作り直す選択がある。その後の修正も手元だけで済ませれば、元の作者に連絡せずに使い続けることもできる。 利用者にとっては合理的でも、その過程で見つかった問題や知識が、上流のプロジェクトへ戻らないことがある。 フォークや再実装自体は以前からあった。講演で印象に残ったのは、AIがそれを選びやすくすることで、改善が共有される経路まで変わるという指摘だった。 実装が増えても、改善を共有する機会や、保守を担う人とのつながりが同じだけ増えるとは限らない。各自の手元で動くものができたあと、その知識をどう共有資産へ戻すのかが問われる。 使われていても作者との接点がなくなる もう一つの変化は、利用者と作者の間にAIが入ることだ。 AIにアプリケーションを作ってもらうと、依存するライブラリの選定や、使い方の調査までAIが進める。利用者は完成したものを使えるが、そのためにどのOSSが使われ、誰が保守しているのかを意識しないまま終わることがある。 ドキュメントを読みに行く機会が減れば、作者の考え方や関連する製品を知る機会も減る。感謝や質問を伝える相手すら、見えにくくなる。 講演では、この問題を扱った論文Vibe Coding Kills Open Sourceも紹介された。これは、利用者との直接の関わりによって作者が収益を得る条件のもとで、AI経由の利用がその関わりを弱めると、OSSの供給や品質にどう影響するかを考えた経済モデルだ。 タイトルは強い。ただ、すべてのOSSが同じように衰退すると実証した研究ではない。どのような経路で作者へ見返りが戻っているかによって、影響は変わる。 具体例として紹介されたのがTailwind CSSだった。Adam Wathanは2026年1月のコメントで、Tailwindの人気が高まる一方、ドキュメントへのアクセスは2023年初めから約40%減り、収益も約80%減ったと説明している。ドキュメントが商用製品を知ってもらう経路なので、そこへの訪問が減ることは事業の継続に響くという。 これはOSSの利用と、保守に必要な収益が別の動きをし得ることを考える具体例になる。 OSSが広く使われること、その作者が知られること、開発を続ける資金が得られること。それぞれをつないでいた経路が、AIによって変わっている。使いやすくすることに加えて、作者へ何が戻るのかも考える必要がある。 ソースの公開と貢献の受付を分けて考える こうした変化の中で、OSSの運営方法も見直されている。 講演では、コードは公開しつつ外部PRは受け付けない方式や、Issueや利用例、設計上の知識を受け取り、実装はメンテナー側で行う方式が紹介された。開発過程は非公開にして、リリース時にソースを公開する形もある。 ここは、「オープン」という言葉に含まれるものを分けて考えると整理しやすい。 分けて考えたいこと 決める内容 ソースコードの利用条件 利用、改変、再配布などにどのような権利を認めるか 外部からの貢献 誰から、どのような提案やPRを受け付けるか 開発過程の公開 設計、テスト、議論、履歴をどこまで公開するか 利用者との接点 質問、再現例、利用報告などをどう受け取るか Open Source Initiativeの定義は、ソースの提供や再配布、改変などの条件を定めている。誰から届いたPRでも受け付け、メンテナーがレビューすることを必須にはしていない。もちろん、ソースを読める状態にするだけでOSSになるわけでもなく、ライセンスの条件は別に確認する必要がある。 コードを公開し、利用や改変を認めながら、貢献を受け付ける手順を絞ることはできる。どこを開くと有益な情報が戻り、どこで受け手の負担が大きくなるのかを、個別に考えられる。 Trivyについての質疑でも、信頼できる貢献者に絞ってPRを受け付ける案や、Issueで先に相談し、担当を決めてからPRを作ってもらう案が挙がっていた。 背景には、同じIssueに複数のPRが届くことや、レビューしても提出者から返事がなくなることがあるという。ベンダーなどから届く有用な貢献を残しながら、最後まで対応する人と進めたいという話だった。 AIを使った人が説明と対応を引き受ける 貢献の受付方法と合わせて、講演を通して繰り返されていたのが、提出する人の理解と責任だった。 AIが書いたコードでも、PRを出す人が変更の理由を説明できるか。なぜその実装を選んだのか、どの条件で動くのか、既存の処理へどんな影響があるのか。レビューで質問されたときに、調べて答えられるか。 コードを生成して提出するところまでを自動化しても、その後の確認や修正をすべてメンテナーが引き受けるなら、相手の仕事は増えてしまう。 生成過程が見えるかどうか、という話も興味深かった。外部から届いたAI生成コードでは、どんな指示や環境で作られ、何を検証したのかが分からないことがある。自分たちで設定し、挙動を確かめてきたエージェントなら、前提を把握しやすい。生成されたコードを受け取る価値には、それを理解するための情報も関わってくる。 質疑でTeppeiさんは、提出者も変更の意図を説明できない場合、メンテナーが理解できる説明を得るまでマージしないと話していた。 現在のGhosttyのAI利用方針にも、使用したAIと関与範囲の申告に加えて、人間が変更内容とシステム全体への影響を理解し、説明できることが明記されている。 自分がここから受け取ったのは、PRを出した時点で貢献が完了するわけではない、ということだ。変更を理解し、質問に答え、必要な修正まで付き合う。その部分を誰が担うのかが、コードを書きやすくなった今ほど重要になる。 初めての貢献者の入口をどう残すか 一方で、受付を信頼できる人に絞ると、別の難しさが出てくる。 これまでの実績がある人だけを受け入れるなら、初めて貢献する人は、どこで最初の実績を作ればよいのか。 質疑では、まさにこの点が問われていた。Teppeiさんも明確な解決策があるとはしておらず、イベントやメンテナーの伴走を通じて、AIも使いながら貢献を学ぶ機会などを候補として挙げていた。 メンテナーを守るための制限と、新しく参加する人の機会。その両方を考える必要がある。 たとえば、いきなり完成したPRを送る前に、問題の再現を確認する。Issueで変更の方針を相談する。小さな調査や説明から関わり、やり取りを通じて信頼を作る。そうした入口なら、実装の量以外の形でも貢献を示せるのではないかと思った。 ただし、伴走にも時間がかかる。入口を残す仕組みを作るなら、その運営をまた少数のメンテナーに背負わせない方法まで考えたい。 まとめ セキュリティツールで多くの問題を検出できた。修正PRを自動で作れた。 そこまでできると、成果が出たように感じやすい。 でも、受け取った人が重複を調べ直し、誤報かどうかを確認し、変更の意図を読み解く必要があるなら、その人の仕事はどれだけ減ったのだろう。 検出結果を渡すなら、どの条件で問題になるのか、何を根拠にそう判断したのかまで伝えたい。修正案なら、変更の理由と検証結果を揃えたい。新しい情報を増やすことと同じくらい、受け手が判断を終えられるようにすることを考える必要がある。 これはツールの機能にも、自分自身の貢献の仕方にも返ってくる問いだと思う。 Teppeiさんは、失われつつあるフィードバックをどう取り戻すかについて、まだ答えはないとしたうえで、新しい仕組みやツールを作る機会にも触れていた。 自分も、AIによって作れるものが増えることを楽しみたい。そのとき、受け取る人が理解できる説明を添えること、使っているOSSへ改善や感謝を返すこと、次の人が参加できる入口を残すことまで、一緒に考えていきたい。 コードを作りやすくなった今、そのコードを支える人と、支えるためのやり取りに、もう少し目を向けたい。 ここまで読んでいただいた方は、当ブログ筆者である佐田淳史のOWS研究会・招待講演もぜひご覧になってください。私の講演では、AIが発展してきたけど今後どうしていく?の一案について話しています。 speakerdeck.com youtube.com

  2. よりによってtrivyがサプライチェーン攻撃を受けた件がおもしろかった。防げるようになったのは最近らしいが github.com/aquasecurity/trivy/security/advisories…

  3. trivy.dev whoisも検索できなくなっている trivy#11533

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  4. trivyくんのドメイン切れてCIぶっ壊れた。。 trivy#11533

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  5. Trivy 大丈夫かな trivy#11533

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  6. GitHub Actions の依存関係を gh actions-lock で固定する GitHub Actions の依存関係を gh actions-lock で固定する GitHub Actions の workflow で actions/checkout@v4 のようにタグを指定すると、後からタグを付け替えられたとき、workflow を変更せずに実行コードが変わる可能性があります。 このリスクを抑える仕組みが workflow dependency lockfile です。 結論:何が嬉しいか workflow には読みやすいタグを残し、Action と推移的依存はコミット SHA で固定できる Dependabot が登録済み workflow の Action と lockfile を同じ PR で更新する GitHub Enterprise Cloud では Require lockfile policy で、未登録 workflow の実行を防げる ! 大前提として、シェルや GitHub CLI で代替できる処理には外部 Action を使わず、依存を増やさないことが重要です。 可変タグによる侵害の実例 タグを参照している workflow は、上流でタグが付け替えられると、workflow を変更せずに別のコードを実行する挙動を狙ったサプライチェーン攻撃が成立し得ます。 2025年3月、広く使われていた tj-actions/changed-files が侵害され、複数のタグが悪意あるコミットを指すように変更されました。コードは runner のメモリ上の情報を workflow のログに出力し、CI/CD の秘密情報が漏れるおそれがありました。 2026年3月には Trivy の関連 Action も侵害され、攻撃者は aquasecurity/trivy-action の77個中76個のタグと、aquasecurity/setup-trivy の全タグを悪意あるコミットに付け替えました。悪意あるコードは runner のメモリやファイルから認証情報を盗み出そうとしていました。 GitHub は Immutable Release 機能をリリースするなどして対応してきましたが、 @v1 のようなタグ指定では効果が薄いなど、依然リスクが残っていました。 固定 SHA の課題 コミット SHA を固定すればタグに影響されなくなりますが、バージョンが分かりにくく、可読性も低くなるという課題があります。 - uses: actions/checkout@11bd71901bbe5b1630ceea73d27597364c9af683 # v4.2.2 workflow dependency lockfile とは 上記の課題を踏まえ、 GitHub Actions でも lockfile による依存関係の固定が導入されました。 lockfile は workflow の Action と実行するコミットを対応付けるファイルで、Action が依存する Action (推移依存)も含めて固定できます。 例えばワークフロー内で actions/checkout@v4.2.2 を指定して gh actions-lock による lockfile を生成すると、workflow はその参照に対応するコミットを実行します。 .github/workflows/ci.yml steps: - uses: actions/checkout@v4.2.2 .github/workflows/actions.lock には、タグと実行する SHA が記録されます。 version: 'v0.0.3' workflows: '.github/workflows/ci.yml': - 'actions/checkout@v4.2.2' dependencies: 'actions/checkout@v4.2.2': ref: 'v4.2.2' commit: 'sha1-11bd71901bbe5b1630ceea73d27597364c9af683' owner_id: 44036562 repo_id: 197814629 また、 Dependabot も対応済みで、バージョンアップ時に lockfile も同じ PR で更新します。 Require lockfile ポリシー Require lockfile policy は、対象 workflow が lockfile に登録されていない場合、その実行をブロックするポリシーです。 これにより、lockfile に基づいた安全な依存関係の管理を徹底することができます。 ! lockfile 自体は Free、Team、GitHub Enterprise Cloud で GA ですが、Require lockfile policy の強制機能は GitHub Enterprise Cloud 向けです。 まとめ gh actions-lock は読みやすい参照を残したまま、Action とその依存をコミット SHA で固定できる Dependabot で更新を追える GitHub Enterprise Cloud では Require lockfile policy で登録を徹底できる 参考: GitHub Actions workflow lockfiles の GA Workflow dependency lockfiles workflow の依存関係を lock する Require lockfile policy を適用する CVE-2025-30066: tj-actions/changed-files の侵害 Trivy 関連 Action の侵害 CISA: Supply Chain Compromise of Third-Party GitHub Action

  7. Reddit · · r/pwnhub · u/_cybersecurity_ · aquasecurity/tfsec

    Turning Terraform Plans Into Attack Paths Without Letting an LLM Make the Security Calls: Raj Annaladasu at Global AppSec USA 2026 Infrastructure-as-code scanners such as Checkov and tfsec flag individual misconfigurations in Terraform, but they do not show how those misconfigurations connect into an attack path. Raj Annaladasu built a pipeline that turns a Terraform plan into an executable OWASP pytm threat model on every pull request. Pytm is OWASP's framework for writing threat models as Python code. His first version let an LLM generate the threat model itself. That cost the repeatability and traceability a CI/CD pipeline needs, since the same plan could yield different results on different runs. In his Global AppSec USA 2026 talk, "From Terraform Plan to Attack Paths: PyTM Threat Modeling in CI/CD with LLMs on a Leash", on Thursday, November 5 at 11:15 a.m. in Bayview A, Raj Annaladasu walks through the current design. Speaker: Raj Annaladasu, Staff Customer Success Engineer, Palo Alto Networks The pipeline builds a typed graph of the Terraform resources and generates data flow diagrams from it. It also infers IAM relationships that Terraform never states explicitly. Every security decision in the current design is deterministic. LLMs only explain findings, map them to security frameworks, suggest fixes and document attack paths. Every AI annotation must point to real evidence in the plan, or the pipeline drops it. The session compares the pipeline live against Checkov, tfsec and a pytm-only approach. It includes examples where AI helped, along with examples where it did not. It also demonstrates prompt injection hidden in Terraform comments steering AI tooling, then the safeguards against it. Attendees leave with an architecture they can build. The session repeats as a hands-on OWASP Project Demo Lab on Friday, November 6 at 1:15 p.m. in Golden Gate. A 15-minute debate on Terraform with Simon Kang and Srdan Reljic follows this talk in Bayview A at 12:00 p.m. Raj Annaladasu is a Staff Customer Success Engineer at Palo Alto Networks, focused on application, cloud-native, software supply chain and AI security. His work includes risk assessments, static analysis and software composition analysis. With Srdan Reljic of IBM Consulting, he presented "AI-Driven Terraform Threat Modeling" at SecretCon in June 2026. That earlier version mapped Terraform findings to MITRE ATT&CK and CIS Benchmarks. He also co-presents "Threat Modeling AI Agents That Can Act: Identity, Retrieval, and Tool-Call Controls" with Simon Kang on Thursday at 3:15 p.m. He then joins a debate on threat modeling agents at 4:00 p.m. The OWASP Developer Guide explains how pytm turns a model written in Python into data flow diagrams, sequence diagrams and threat reports. Aqua Security has folded tfsec into Trivy and published a migration guide. To go deeper on the topic, start here: - SecretCon 2026: AI-Driven Terraform Threat Modeling (Reljic and Annaladasu) - OWASP pytm on GitHub - OWASP Developer Guide: pytm - Checkov on GitHub - tfsec to Trivy migration guide Cloud security engineers who already scan Terraform in CI will see how to connect isolated findings into attack paths. Does your Terraform scanning show how two low-severity findings combine, or only list them separately?

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  8. WordPressからnpm・AIツールまで。直近1年の脆弱性と侵害12事例 修正版を入れたあと、何をすれば対応を終えたと言えるのだろう。 この問いは製品が変わると答えも変わる。SiteGuard Server Editionでは更新する前に攻撃の痕跡を保全するよう案内された。Metabaseでは更新に加えて、利用者のセッションや接続先データベースの認証情報まで確認するよう求められた。Trivyでは安全性を調べるために動かしたツール自体が侵害され、実行した環境の秘密情報を点検する事態になった。Axiosではアプリから使う前にも、依存の導入時に不正なコードが動く仕組みが仕込まれた。 どれも「更新が大事」という一文には収まる。でも、その一文だけでは作業の順番も、確認する範囲も分からない。 前回のPHP2Shellの記事では、WordPressの緊急点検を通じて、設定の意味や残すべき機能を見直した。今回はそこから範囲を広げ、2025年11月1日から2026年10月31日までに公表・悪用・対応が報告された脆弱性と供給網侵害を調べた。WordPressやWebサービスの開発・運用に近い12の事例群を、実際の対応と一緒に追っていく。 公表された悪用・対応の記録をもとに、どの構成が対象になり、更新後にどんな作業が残るのかをたどる。 解説図:サイトの運用では公開ページ以外にも、自動化、接続先、開発環境、作業する人の端末が関係する。 自分に関係する事例から読む 読みたい場所へ進めるよう、まず今回の12事例を並べた。CVEは脆弱性を識別する番号で、一つの製品に複数付くこともある。関連する問題をまとめ、AxiosやLiteLLMのような配布物の侵害も扱うため、12事例とCVEの数は一致しない。 使っているもの・担当する範囲 事例 特に確かめたいこと WordPress wp2shell 同じ系列で更新が実際に完了しているか Reactを使うサーバー React2Shell Server Componentsを処理しているか 自動化ワークフロー n8n 編集権限と公開フォームを別々に確認したか AIフローの公開 Langflow フローの実行と変更を区別できているか BI・分析基盤 Metabase 保存された認証情報まで調査したか 自分で管理するDB MongoBleed 認証より前の処理も修正されているか サーバー用WAF SiteGuard Server Edition 更新前に診断情報を保全したか 機器へのクラウドSSO FortiCloud SSO 追加告知と設定流出への対処を追ったか CI/CDの脆弱性検査 Trivy 実行した配布物と露出した秘密を確認したか PythonのAIゲートウェイ LiteLLM 3月と10月で異なる配布物と経路を確認したか npmの依存とビルド環境 Axios 導入時の実行と、端末・CIの秘密情報まで調べたか 普段使うブラウザー Chrome 更新の取得と適用を両方確認したか ! 情報の基準日は2026年10月31日。本文中の修正版は原則として「その問題への修正が最初に入ったバージョン」を示す。現在導入するバージョンは、後続の修正とサポート状況を含めて公式の現行情報で選んでほしい。図は説明用で、攻撃ログや被害画面を再現したものではない。 時系列も一度見ておきたい。告知が出た日、攻撃を観測した日、悪用を確認した一覧へ追加された日は、それぞれ意味が違う。後から出た調査報告を、攻撃の始まった日と読み替えると、対応に使える時間を見誤ってしまう。 解説図:選んだ事例の主な公表時期。すべての脆弱性を網羅した年表でも、被害件数の比較でもない。 WordPressのwp2shell PHP2Shellと名前が似ているが、こちらはWordPress本体の別の問題だ。2026年7月17日、WordPressは7.0.2のセキュリティリリースで二つの脆弱性を修正した。SQLインジェクションのCVE-2026-60137と、REST APIのバッチ処理におけるルートの取り違えに関するCVE-2026-63030だ。WordPressのリリース告知 二つがつながったときの影響 WordPress 6.9以降では、この二つを組み合わせると遠隔でのコード実行(RCE)につながり得る。管理画面に入るためのパスワードが先に盗まれていなくても問題になる、という点が重い。IPAは7月22日の注意喚起で、標準構成で管理者権限などを要さず成立する可能性と、CISAの悪用確認済み脆弱性カタログへの登録を伝えている。IPAの注意喚起 ここで、WordPressのバージョンをまとめて扱うと話がずれる。6.8系列ではSQLインジェクションの問題が対象になり、6.9系列以降で二つを組み合わせた影響が問題になる。同じ「WordPressに脆弱性」という見出しでも、中身は一段違う。 開発元のアドバイザリもSQLインジェクションと組み合わせによるコード実行を分けている。一つ目の深刻度だけを見て軽く扱ったり、逆にすべての旧バージョンが同じ条件でコード実行まで到達すると決めたりせず、系列と組み合わせを読む必要がある。SQLインジェクションの開発元情報、バッチ処理の開発元情報 解説図:単独の問題と攻撃チェーンの影響範囲を分ける。古い系列すべてを同じ条件として扱わない。 自動更新の案内と更新完了 この事例で注目したい対応は、WordPress.orgが影響するバージョンへ強制自動更新を有効化したことだ。利用者全員がニュースに気づき、手動で更新してくれることだけに頼らない対応だった。 ただし、提供側が更新を配信したことと、自分のサイトで更新が終わったことは別に確かめる。IPAも、設定や構成、更新失敗によって適用されない場合があるため、管理画面などで実際のバージョンを確認するよう案内している。管理を委託しているなら、「自動更新の対象です」という回答の先に、稼働しているバージョンと確認時点まで聞きたい。 当時の系列 この問題への修正境界 6.8 6.8.6。SQLインジェクションへの修正 6.9 6.9.5。二つの問題への修正 7.0 7.0.2。二つの問題への修正 この表のバージョンを、10月末に新しく導入するバージョンの指定にはしない。同じ系列にも後続リリースがある。公式のWordPressのバージョン一覧と現在の告知を合わせて確認する。 解説図:更新を配信する側の対応と、利用するサイトでの適用確認をつなぐ。 運用へ持ち帰るなら、WordPress本体のバージョンを記録し、使っている系列の修正状況を確認する。そのうえでログイン、記事の表示、フォーム、管理画面の更新など、通常の操作を通す。REST APIの名前を見て一括で閉じる前に、そのAPIを使う公開機能や編集機能が何かを確かめたい。入口を塞ぐ判断にも、止まる機能との対応が要る。 React2Shell 2025年12月3日に公表されたCVE-2025-55182は、React Server Components(RSC)の処理に関係する認証前のコード実行の脆弱性だ。名前を見て「Reactを使っているから全部同じ」と受け取ると、必要な点検を外してしまう。React公式の告知 ブラウザーとサーバーを分ける 今回問題になったのは、Server Componentsを処理するサーバー側のパッケージだ。ブラウザー内だけで動くReactアプリまで一律に対象になるわけではない。一方、自分でServer Functionを書いていなくても、サーバー側でRSCを扱う構成なら確認が必要になる。 「画面を作るライブラリ」と思っていたものが、サーバーへ届く入力を処理している。その構成を把握していないと、フロントエンド担当とサーバー担当の間で更新の担当が浮いてしまう。アプリの名前より、どこでどのパッケージが動くのかをたどる方が役に立つ。 当初はreact-server-dom-webpack、react-server-dom-parcel、react-server-dom-turbopackの19.0、19.1.0、19.1.1、19.2.0が影響し、このRCEへの修正は19.0.1、19.1.2、19.2.1に入った。ただし、その後のDoSや情報露出などの追加問題とは区別する。最初の修正版の数字だけを、今の推奨バージョンとしてコピーしない。 解説図:確認するのは、名前にReactがあるかだけでなく、サーバーで何を処理しているか。 公開から適用までの時間 AWSは12月4日の報告で、公表から数時間以内に攻撃試行を観測したと説明した。Google Threat Intelligence Groupは12月12日、侵害調査で確認したバックドアや暗号資産マイナーの配備などを報告している。攻撃試行の観測と、侵害後の調査結果は分けて読む。AWSの観測報告、Googleの調査報告 この短さを見ると、週末にまとめてニュースを読む運用だけでは間に合わない場合がある。とはいえ、焦って別のアプリを更新しても解決しない。まず影響する構成と外部からの到達可否を押さえ、更新が必要なアプリとデプロイ先を担当者に伝える。速さと対象の特定は両方必要になる。 Vercelの振り返りにはWAFへの対応だけでなく、影響するデプロイへの通知、更新を支援するCLI、修正PRの作成といった手段が出てくる。修正コードを公開したあと、利用者が自分の環境へ届けるまでに作業があることがよく分かる。Vercelの対応記録 解説図:依存ファイルを直した状態と、その修正を含むアプリが公開環境で動く状態を区別する。 自分の運用ではpackage.jsonの記載だけで判断せず、解決された依存のバージョンとデプロイ済みの成果物を確認する場面になる。更新のPRがマージされても、以前のコンテナーが動いたままなら、公開環境への適用確認は残っている。WAFで一部の通信を遮断できることも、脆弱な処理自体が修正された証拠にはならない。 n8nの編集権限と公開フォーム n8nのような自動化ツールには、APIキーや接続情報を預け、複数のサービスをまとめて動かすことがある。ワークフローを作れる人は、見た目以上に強い権限を持つ。その一方で、公開フォームはログインしていない人にも使わせたい。この二つを分けて考えさせられるのが、年末から翌年に続いた一連の問題だ。 三つの問題を条件と修正版で分ける CVE 開発元の公表日 主な条件と当該問題の修正境界 CVE-2025-68613 2025-12-19 認証済み利用者の式評価に関係。1.120.4、1.121.1で修正 CVE-2026-21858 2026-01-07 一部のフォーム系ワークフローを通じた未認証のファイルアクセス。1.121.0で修正 CVE-2026-25049 2026-02-04 編集権限を持つ認証済み利用者による式評価の追加の回避。1.123.17、2.5.2で修正 出典は開発元の告知と、開発元が登録したCVEの公開レコードだ。68613の修正バージョンはCVEレコードでも確認できる。CVE-2025-68613の告知、CVE-2026-21858、CVE-2026-25049 この三つを「n8nで未認証RCE」と一行にまとめると、個々の条件が消えてしまう。式を設定する利用者の権限が関係する問題と、公開されたフォームから届く問題では、確認する処理が違う。一つの問題の修正版が後から公表されたすべての問題まで直しているわけでもない。 解説図:ワークフローを編集する人と、フォームを使う人では、必要な権限と到達する処理が違う。 組み合わせた悪用も報告された VulnCheckは2026年3月27日、CVE-2026-21858とCVE-2025-68613を組み合わせた、未認証でのコード実行につながる攻撃試行を観測したと報告した。カナダ政府の告知でも、CVE-2025-68613のCISAカタログへの追加が伝えられている。VulnCheckの観測、カナダ政府の注意喚起 「認証済みの人しか使えない問題だから、外部の人には関係しない」と区切っていたところへ、別の入口がつながる。WordPressの事例と同様、脆弱性は一つずつの説明だけでなく、同じ環境で組み合わさる条件も見る必要がある。 更新までの対処としては、開発元が示す公開フォームやWebhookへの制限、編集できる利用者の制限、OS権限やネットワークの到達先の制限を検討する。ただし、これらは適用条件を確認して使う暫定的な対処であり、修正の適用と同じ状態にはならない。 解説図:ツールを更新する作業と、預けている権限・接続情報を確認する作業を合わせて考える。 自動化は便利になるほど、連携先が増えていく。だから、n8n自身の管理者パスワードだけを点検して終わらせたくない。影響を受けた可能性のあるワークフローが、どの認証情報を利用でき、どのサーバーへ接続できたかをたどる。秘密情報が露出したと判断した場合は、接続先側での失効や再発行も対応に含める。これは、このツールを使うときの権限設計にもそのまま返ってくる話だ。 Langflowの公開フロー AIのフローを公開するとき、外から使わせたいのは、用意した処理の実行だ。その処理の中身まで外部の人が差し替えてよいわけではない。LangflowのCVE-2026-33017は、この区別が崩れる問題だった。 実行する権限と変更する権限 開発元のアドバイザリでは公開フローを構築・実行する経路で、保存済みの定義だけでなく外部入力のフローデータを受け付け、サーバー側でPythonの処理へ渡してしまう問題が説明されている。影響欄は1.8.2以下、当該問題への修正境界は1.9.0だ。公開機能の使い方や認証設定などを含めて条件を確認する。Langflowの開発元情報 たとえば「このフォームから質問してよい」と「フォームの裏で動くプログラムを渡してよい」は、同じ許可ではない。公開した処理を利用させる機能に、処理の定義そのものを受け取る機能が混ざれば、許可した操作の範囲が変わってしまう。 点検したいのは、ログイン画面があるかだけではない。公開しているフロー、その識別子が使われる経路、外部から受け取るデータ、認証を通る場所を対応させる。管理画面が閉じていても、公開実行用のAPIは別に動いていることがある。 解説図:用意した処理を呼び出す許可と、サーバーで動く処理を差し替える許可を分けて考える。 約20時間という観測 Sysdigは3月19日の報告で、脆弱なLangflowを置いた観測環境に、アドバイザリ公開から約20時間後には攻撃試行が届いたと説明した。3月17日20:05 UTCのアドバイザリ公開に対し、最初の観測は3月18日16:04 UTCごろだ。Sysdigの観測報告、公開日時を示すAdvisory API ここで「約20時間」の起点はCVEレコードの公開ではない。CVEレコードは3月20日で、アドバイザリや観測報告と日が違う。また、この報告が示すのはハニーポットで観測した攻撃試行であり、実在する利用企業が何社侵害されたかという件数ではない。 この短い間隔を、単に「攻撃が速くて怖い」で終わらせたくない。公開フローが外から使えること、そこに秘密情報が置かれること、利用者自身がインスタンスに更新を適用することが重なっている。ニュースの購読先と、影響を受けるインスタンスを見つける手段がつながっているかを考える材料になる。 解説図:約20時間はアドバイザリ公開からの間隔。報告日と出来事の日を分けると、経緯を取り違えにくい。 当面の露出を減らすための公開経路の制限や前段での認証と、ソフトウェアを修正する作業は分けて扱う。Sysdigは保持していたシークレットの点検・交換や、不審な外向き通信の確認も挙げている。Langflowを修正版に更新しただけで、既に利用できた接続情報まで無効になったとは判断できない。 なお、LangflowにはCVE-2025-3248という別の認証不足の問題もある。初回公表は今回の期間より前だが、2026年7月にも悪用の観測が報告された。新しい問題の修正に追われるなかで、以前から動く別インスタンスが残っていないかも見たい。新しいニュースだけを読むことと、手元の古い環境を把握することは、別の作業になる。以前の問題の開発元情報、7月の観測報告 Metabaseと接続先データベース BIツールを一台更新する話だと思って読むと、対応範囲の広さに目が止まる。MetabaseのCVE-2026-72898では、BIツール自身への侵入から、そのツールが接続しているデータベースへ影響が広がり得る。 二つのデータベースを分ける Metabaseは2026年8月6日、認証なしで届くAPIのSQLインジェクションを公表した。攻撃者がMetabaseのアプリケーションデータベースに不正なSQLを実行し、Metabaseの管理者権限を得る可能性がある問題だ。ここでいうアプリケーションデータベースは、Metabase自身の利用者や設定などを持つ側を指す。開発元アドバイザリ その管理権限を取られると、アプリに保存された接続情報や設定へ手が届く可能性がある。そこから、分析用に接続している別のデータベースの情報が問題になる。「BIの画面を見られた」で止めず、アプリ自身のDBと、アプリが接続する先のDBを分けてたどりたい。 開発元はMetabase Cloudが未知の脆弱性を使った攻撃を受け、対象エンドポイントを遮断したうえで修正したと説明した。公表時点でCloud利用者の環境は修正済みと案内し、自己管理している利用者には更新と追加の点検を求めている。Metabaseの対応告知 解説図:アプリの設定を持つDBと、業務データを読む接続先DBを分ける。侵害調査では両方が関係する。 更新後に残った作業 OSS版の当時の修正境界は、0.58.24、0.59.21、0.60.17、0.61.11、0.62.9、0.63.5だった。利用するバージョンの種類と系列を、開発元の対応表に照らして確認する。そのうえで、対象の/api/session/reset_passwordが公開されていた場合、開発元は次の点検も案内した。JPCERT/CCの注意喚起 有効な利用者セッションを失効させる。 APIキーと管理者アカウントに見覚えのない変更がないか調べる。 接続先データベースの認証情報を交換する。 Metabaseと接続先DBのログや操作履歴を調べる。 「更新後にパスワードを変えましょう」という一般論より、対象がずっと具体的だ。アプリを更新する担当と、データベースの認証情報を管理する担当が別なら、後半の仕事を誰が持つかも決める必要がある。クラウドの修正完了の案内を読んだだけでは、接続先側の確認まで終えたことにはならない。 解説図:公開APIの修正と、利用できた権限や認証情報への対処を別の項目として進める。 ログの読み方も具体的だった。開発元が示したパターンには、パスワード再設定のAPIへのPOSTがHTTP 400となり、続く利用者情報の取得がHTTP 200になる組み合わせがある。一つ目がエラーだからといって、そこで攻撃も失敗したとは決められない。エンドポイント、順番、その後の操作を合わせて調べるための手がかりだ。 もちろん、その通信を一度見つけたことだけで、影響の全範囲まで判明するわけではない。管理者の追加、接続設定の変更、DBの読み出しなど、次の調査へつなげる。JPCERT/CCもインターネットから届く状態だった環境では、更新だけで完了せず侵害有無を確認するよう促している。 MongoBleedと認証前の処理 DBには強いパスワードを付け、利用者ごとの権限も絞る。その対策は必要だが、通信が認証にたどり着く前の処理にも不備は起こる。MongoDB ServerのCVE-2025-14847、通称MongoBleedはその点を確かめる事例になる。 認証より手前で読むデータ 問題はzlib圧縮を扱う通信処理にあり、認証前のクライアントから、未初期化のヒープメモリーを読み出される可能性があった。MongoDBに到達できることが関係し、認証を有効にしただけでこの処理が修正されるわけではない。一方、この問題をそのまま「任意のコードを実行できる」「DBの全件を確実に持ち出せる」と書き換えるのも違う。MongoDBのセキュリティ情報、公式の修正チケット ここで確認するのは、DBのネットワーク処理と認証の順番だ。DBへ接続できる送信元を絞ること、通信処理の修正を適用すること、利用者の認証を設けることは、それぞれ担当する場所が違う。どれか一つを済ませたことで、ほかの対処まで不要になったとは考えない。 解説図:認証があることと、認証前の通信処理が修正されていることを区別する。 Atlasと自己管理版の対応 MongoDBの振り返りでは、社内で問題を発見したのは12月12日。Atlas全体には12月18日までに修正を適用し、12月19日にCVEを公表したと説明されている。管理サービスでは提供側が先に修正を進められるが、自己管理のサーバーでは利用者が更新する範囲が残る。MongoDBの対応時系列 当該問題への修正境界には8.2.3、8.0.17、7.0.28、6.0.27、5.0.32、4.4.30が挙げられた。更新がすぐできない場合の暫定策としては、サーバーの圧縮設定からzlibを明示的に外す方法も案内された。利用中の構成と公式手順を確かめ、設定変更をソフトウェアの修正と取り違えないようにする。 ここで「マネージドだから確認しなくてよい」とまでは言えない。提供元の修正対象に、自分が使っているサービスや構成が含まれているかは見る必要がある。逆にAtlasについての修正完了の説明を、自分で立てたMongoDBサーバーにも適用済みだと読んではいけない。製品名が同じでも、更新を実施する担当は変わる。 解説図:管理を誰に任せているかで確認先が変わる。悪用確認済み一覧への追加日は攻撃開始日を示さない。 当初のMongoDBの説明には、悪用や顧客データ侵害の証拠はないという記述があった。その後、CISAは12月29日に悪用確認済みカタログへ追加した。この二つを並べたとき、初期の説明を現在も続く「悪用はない」という断定として読むと誤る。情報が更新された順番を残すことが大切だ。当時のMongoDBの案内、CISAの公式カタログデータ 運用へ置き換えると、DBを置いている場所、管理サービスか自己管理か、公開範囲、圧縮設定、適用されたバージョンを確認する作業になる。「DBには認証がある」という回答の先を、通信が届く位置から見直せる事例だ。 SiteGuard Server Editionと痕跡の保全 守るために置いたWAFも、更新や侵害調査の対象になる。これはWAFが役に立たないという話ではない。防御製品にもソフトウェアと権限があり、その製品が何を処理するかまで管理する話だ。 統計機能の脆弱性 EGセキュアソリューションズは2026年10月14日、SiteGuard Server Editionの統計機能にあるCVE-2026-106931を公表した。OSコマンドインジェクションの問題で、製品が動くサーバー上でrootまたはSYSTEM権限のコマンド実行につながり得る。同社は悪用を確認しているとも説明した。開発元の告知 対象バージョンはVer2.20以降で、統計機能が有効な構成が影響する。同機能は初期値でも有効とされている。製品名、バージョン、機能を合わせて照合する必要がある。WordPress用のSiteGuard WP Pluginなど、名前にSiteGuardが付くすべての製品へ、この影響を広げてはいけない。 また、公式に示された評価にはローカルの攻撃経路と低い権限の前提がある。この説明を、WAFの公開URLへ誰でも一回アクセスすれば侵入できる話に置き換えない。影響が大きいことと、成立条件を省いてよいことは別だ。JVNの情報 解説図:製品名だけで判断せず、バージョンと機能を照合する。別製品や異なる攻撃条件へ一般化しない。 更新より先に残すもの この事例で特に覚えておきたいのは、更新やパッチの適用前に「診断情報」を取得して保管するという案内だ。更新によって攻撃の痕跡が消える可能性があるため、調査に使う情報を先に残す必要があった。JPCERT/CCもこの順序を注意事項として取り上げている。JPCERT/CCの注意喚起 「一刻も早く更新する」と「調査の材料を残す」は、どちらかを無視すればよい関係ではない。この製品では公式に案内された診断情報の取得を先に行い、そのあとに更新・パッチへ進むという、具体的な順番が示されている。 当該修正はApache版・Nginx版・IIS版では8.00 Update5、FreeBSDのApache版・Nginx版では7.00 Update6に入った。IIS版の3.10から4.00 Update4は影響対象から除かれる。更新が難しい利用者向けには対象ファイルを差し替えるパッチ、回避策としては統計機能の無効化も案内された。バージョンの文字列をざっと読まず、OSと製品版を組み合わせて選ぶ部分だ。 解説図:この製品では更新によって失われ得る診断情報を先に残すよう公式に案内された。 開発元はサポート契約がある利用者には9月29日に個別通知したとも説明している。一般向けの公表日と、契約先へ通知した日は同じではない。運用側ではニュースだけでなく、契約先に届く保守通知が誰へ届き、誰が判断するのかも点検したい。 レンタルサーバーに付属するWAFを使っている場合も、「自分が製品を直接契約していないから関係がない」とは判断せず、提供元の告知で対象と対応状況を確認する。利用者が変更できる設定と、提供側が更新する製品本体を分けて聞くと、問い合わせも具体的になる。 FortiCloud SSOの連続した告知 「先月、言われたバージョンへ更新した」。その記録は大事だが、翌月に別の入口の問題が公表されれば、もう一度確認することになる。FortiCloud SSOの事例は、更新履歴を残すことと、追加告知を追うことの両方を考えさせる。 12月と翌1月の問題 2025年12月9日に公表されたCVE-2025-59718とCVE-2025-59719は、FortiCloud SSOが有効な対象装置への認証回避に関係する。続く2026年1月、Fortinetは当時の最新リリースに更新済みの装置にも類似の不正ログインがあったと報告し、別の攻撃経路を調査した。Fortinetの調査と更新履歴 1月27日に公表されたのがCVE-2026-24858だ。Fortinetが登録したCVEの公開レコードには、攻撃者自身がFortiCloudアカウントと登録済みデバイスを持つ条件が記載されている。標的の装置へ正規にログインできる資格が先に必要、という意味ではない。ただし、12月の問題と同じ「未認証の攻撃者」という一文で、条件をまとめて落とすのも正確ではない。Fortinetが登録したCVEレコード また、対象は訂正後のFortiCloud SSOの範囲で読む。Fortinetは1月28日、第三者のSAML IdPとFortiAuthenticatorはこの問題の対象ではないと明示した。「SSOを使っているから全部同じ」でも、「SSOなら認証があるから心配ない」でも判断できない。 解説図:前の修正の有無と、あとから判明した別の経路を分ける。告知の訂正まで時系列に残す。 提供側の停止と利用側の点検 Fortinetの更新履歴では1月23日に悪用されたアカウントを無効化し、1月26日にFortiCloud SSOを停止した。1月27日には脆弱な装置からのアクセスをサポートしない条件でSSOを再開したと説明されている。これは提供側が実際に行った対応だ。 一方、利用者側には対象装置のファームウェア更新、想定外の管理者アカウントや設定変更の点検が求められる。侵害の兆候がある場合は、装置と設定を侵害済みとして扱い、正常な設定への復旧や変更の監査、認証情報の交換へ進むよう勧められている。提供側でSSOが再開したことだけで、個々の装置の設定まで元に戻ったわけではない。Fortinet公式の復旧案内を含む調査報告 認証情報の交換には装置の管理者パスワード以外も関係する。LDAPやADとの連携、VPNなど、設定に含まれる秘密情報を確認する。外部へ持ち出された可能性のある設定が、別のシステムへ入る材料を含んでいないか、という見方だ。 解説図:サービス提供側の対応後も、利用側では装置の設定とそれに含まれる認証情報を確認する。 FortiOSの7.4系列を例にすると、12月のCVE-2025-59718への修正指定は7.4.9以上、1月のCVE-2026-24858への修正指定は7.4.11以上になる。これはそれぞれの問題に対する修正境界で、今から選ぶ全製品共通の最新バージョン一覧ではない。12月のCVEレコード、1月のCVEレコード このような対応では「更新済み」という一語だけを記録すると、どの問題まで対応したかが後で分からなくなる。対象CVE、製品と系列、適用したバージョン、追加告知の確認時点を一緒に残すと、次の知らせが来たときに確認しやすい。 Trivyと検査ツールの配布経路 脆弱性を調べるためにCIで動かしたスキャナーが秘密情報を持ち出す側になっていた。安全を確かめるための道具まで、どこから届き、何の権限で動くかをたどる必要がある。 バージョン番号だけでは対象が決まらない Trivyでは2026年3月19日、悪意あるコードを含むv0.69.4が配布された。Actionの既存タグも書き換えられ、その後にはDocker Hubの配布物への影響も公表された。CVE-2026-33634が割り当てられているが、通常の機能の不備にパッチを当てるだけで整理できる事例ではない。Trivy公式アドバイザリ 利用側が確認するのは、Trivyの数字だけではない。本体をどこから取得したか、どのActionを参照したか、タグかコミットSHAか、いつ実行したか。さらに、その処理にどんな秘密情報が渡されていたかを調べる。 同じタグを使っていても、取得した時点で中身が違うことがある。また、参照しているActionをSHAで固定していても、そのActionが内部で別の可変タグを呼ぶ構成なら、そこで参照先が変わり得る。固定した一行だけを見て安心せず、実際に呼ばれる配布物をたどる必要がある。 解説図:信用して実行する道具も取得元・参照先・実行時刻と渡している権限を確認する対象になる。 トークンを変える順番 3月30日の当事者の振り返りでは既存のGitHub・レジストリーのトークンを失効させてから、新しいアクセスを発行する対応が説明されている。初期の認証情報の更新が複雑で、別アカウントを通じたアクセスが残った経緯も報告された。危険なワークフローの実行条件の除去、SHA固定、リリースの不変化なども対策に含まれている。Trivyの事後報告、Aquaの調査・対応の更新 ここは利用側でも順序を考えたい。侵害された可能性のあるジョブが動いたまま、新しいキーだけを渡せば、それも読める状態にしてしまう。危険な実行を止め、影響する成果物と実行履歴を調べ、露出した秘密を失効・再発行し、安全な状態を確認した環境で再開する。この順序は今回の事例から運用へ引きつけた考察だ。 利用者側の判断も公表されている。Apache Software Foundationは3月20日の初報で、調査の間、それまで利用を許可していた関連Actionを無効化し、ビルドが失敗する可能性も明示した。調査中の段階で利用を止める範囲と、その業務への影響を伝えた例として読める。これは同組織の秘密情報流出がすべて確認された、という意味ではない。Apacheの初報 解説図:悪意ある配布物を除くだけでは、実行中に利用できた秘密情報までは失効しない。 当時の退避先として示された本体v0.69.2やv0.69.3と、情報基準日時点の公式最新リリースv0.76.1も区別する。古い対応記事から安全な退避先を見つけても、そのバージョンを使い続ける指示と読み替えない。Trivyのリリース一覧 検査ツールを入れたこと自体が、検査の完了を保証するわけではない。どこから入手し、何の権限で動かし、その結果を誰が読むのかまでが、CIで検査を運用する仕事になる。 LiteLLMで二度起きた配布物の侵害 Trivyの影響はそのツールを直接動かした組織だけにとどまらなかった。複数のLLMへの接続をまとめるLiteLLMは、3月のPyPI侵害とTrivyの関係を10月30日の振り返りで説明している。さらに10月には、別の経路から正規のリリース工程を使われた。同じ製品の事件でも、前回の「対象外」という説明を使い回せない。 3月と10月では、影響する配布物が違う 出来事 公式に示された主な対象と境界 2026-03-24 PyPIのlitellm==1.82.7、1.82.8。当時の公式Proxy Dockerイメージは非対象 2026-10-21 PyPIのlitellm==1.107.0と、公式が列挙したDocker Hub・GHCRのコンテナ。非公開のEnterprise配布は非対象 3月の公式初報はCIのセキュリティ検査に使ったTrivyの依存を侵害の起点とみていた。悪性版には認証情報を集めて外部へ送るコードが含まれた。公式Proxy Dockerが影響しなかったのは、その配布経路が当該PyPIパッケージに依存していなかったためだ。「LiteLLM全体が同じ状態」だったのではない。3月の公式報告 10月はコンテナも対象になった。v1.107.0だけでなく、latest、main-latest、main-stableも悪性イメージを指した時間帯がある。今のタグが正常な参照先へ戻っていても、以前に取得したイメージまで変わらない。取得・実行時刻とイメージの内容を識別するdigestを、10月の公式な対象一覧へ照らす必要がある。 解説図:3月の「公式Dockerは非対象」を、別事件である10月へ広げない。タグ名だけでなく、取得した内容を確かめる。 正規の工程を通っていても、入力と権限を調べる 10月23日の原因分析では、5月に公開リポジトリーへ誤って入った内部サービスの管理キーが、削除後も失効されずに残ったと説明された。攻撃者はそのキーからGitHub組織の所有者のトークンを取得し、リリース工程が読むソースを別のリポジトリーへ変更した。さらに別の盗難トークンで承認し、正規の工程から悪性版をビルド・配布させた。10月の公式の原因分析 ファイルから秘密を消すことと、その秘密を無効にすることは違う。10月30日の説明でも、悪性版に有効な署名とTrusted Publishingの来歴があったと報告された。署名や公開元の確認に加え、リリースに使うソースと承認権限まで調べる理由が見える。再発防止の説明 影響する環境で、確認のためのpipを動かさない 10月の公式案内は、影響環境でPythonを起動するとcook.pthやsitecustomize.pyが再実行され、pipも例外ではないと警告した。慌ててpip installから始めない。まず疑わしい実行を止めて記録を保全し、正常な別環境から対象の配布物と実行履歴を調べる。痕跡のファイルが見つからないことも、未侵害の証明にはならない。利用者向けの復旧案内 侵害が疑われる環境では、LLM提供元のAPIキーだけでなく、DBのパスワード、クラウドの実行権限、そのホストから利用できた秘密情報まで確認する。正常な別端末から失効・交換し、既知の正常な状態から実行環境を再構築する。古い配布物を削除する作業だけでは、既に利用できた認証情報を無効にできない。 解説図:確認コマンド自体が不正コードを再実行する場合がある。対象の特定、秘密情報の処置、環境の復旧を順序立てて進める。 Axiosとnpmの配布経路 アプリからHTTPリクエストを送る前に、ライブラリの導入だけで端末の侵害につながり得る。Axiosのサプライチェーン攻撃で押さえたいのは、攻撃が始まる場所だ。公開したWebアプリだけを点検しても、開発端末やCIで起きたことを見落としてしまう。 2026年3月31日、乗っ取られたメンテナーのnpmアカウントから、悪意ある依存を含むAxiosが公開された。Aikidoが整理した対象はaxios@1.14.1とaxios@0.30.4。普段使っているパッケージの正規の名前で配られ、二つの系列が影響を受けた。Aikidoの調査記事 importしていない依存が、導入時に動く 追加されたのはplain-crypto-js@4.2.1という依存パッケージだった。解析では、Axios本体のソースからこのパッケージをimportするコードは見つからなかった。攻撃者が使ったのは、インストール時に実行されるpostinstallスクリプトだ。そこから、端末を遠隔操作するための不正プログラムであるRATを、macOS、Windows、Linuxへ配備する仕組みになっていた。StepSecurityの解析 つまり、アプリのHTTP通信に不審な処理がないかを探すだけでは足りない。導入時スクリプトを許す環境では、自分のアプリを起動する前にも、依存パッケージのコードが実行される。テストを始めるより前に、ビルド用の認証情報へ届く可能性がある。調べる対象にはインストールを実行した端末とCIランナーも入る。 npmで配られたもの 今回確認された役割 axios@1.14.1 1.x系列に悪意ある依存を追加したバージョン axios@0.30.4 0.x系列に同じ依存を追加したバージョン plain-crypto-js@4.2.1 導入時のスクリプトでRATを配備するための依存 StepSecurityの時系列では、悪性のAxiosが出たのは3月31日00:21 UTCと01:00 UTC。二つの系列への公開は39分の間に続いた。解析では、対応するコミットやタグはAxiosのGitHubリポジトリーに存在しなかったとも報告された。GitHubでソースを読んだことと、npmから取得した配布物を確かめたことは、同じ確認にならない。 解説図:Axiosのソースからimportされない依存でも、導入時スクリプトを許すとコードが動く。取得した事実と実行結果は分けて調べる。 消えているファイルを、安全の根拠にしない この事件では、実行後にドロッパーが自分のファイルを削除し、package.jsonを無害に見える内容へ差し替える動きも解析されている。あとからnode_modulesを見て不審なスクリプトがなかったとしても、それだけで過去の実行を否定できない。Aikidoが示した痕跡と対応 反対に、plain-crypto-jsのフォルダーを見つけただけで、RATの配備まで成功したと断定するのも早い。パッケージを取得・展開したこと、導入時スクリプトが実行されたこと、その後の不正プログラムが動いたことには段階がある。スクリプトを無効にしていた構成も含めて調べる必要がある。 確認するのは現在の依存ツリーとlockfileに加え、該当時期のインストール・ビルドの履歴、ネットワーク通信、使ったキャッシュだ。悪性バージョンを解決していたジョブが、どの環境で、どの秘密情報を使えたかを対応させる。npmから削除された後でも、以前に取得した配布物やキャッシュを調査から外さない。 当事者は端末と認証情報まで対応した メンテナーは4月2日に公開した事後報告で、端末を狙ったソーシャルエンジニアリングとRATによってnpmアカウントの認証情報へアクセスされたと説明した。実施した対応として挙げたのは、メンテナーの端末の初期化と、認証情報のリセットだった。また、OIDCを使う公開手順や、公開後に変更できないリリースの整備などを、進行中の改善として挙げた。メンテナーの事後報告 Vercelも3月31日、自社のビルド基盤から攻撃者の通信先への接続を遮断したと公表した。同社は自社システムへの影響はなかったと説明する一方、悪性バージョンをビルド環境で使った利用者には、クリーンな依存での再デプロイと、その環境に置かれていたAPIキー、DB認証情報、トークンなどの交換を案内した。Vercelの対応と利用者向けの案内 ここでAxiosだけを前のバージョンへ戻しても、既に読まれた可能性のある秘密情報は元に戻らない。利用者側でも、影響する実行を止めて記録を保全する。侵害が疑われる場合は、その環境から利用できた認証情報を、正常な別の端末から早急に失効・更新する。端末やランナーは既知の正常な状態から再構築し、新しい秘密は安全を確かめた復旧先だけへ渡す。GitHubのマルウェア情報も別の端末から秘密情報を更新し、パッケージ削除だけで関連する不正プログラムを除去できたとは考えないよう案内している。Axiosのマルウェア情報 依存の入れ直し、環境の復旧、秘密情報の処置を、それぞれの完了として確認したい。 解説図:悪性バージョンを除去する作業と、実行した環境・そこで利用できた秘密情報への対処を分ける。 lockfileとnpm auditにも、担当する範囲がある 当時の退避先は1.xが1.14.0、0.xが0.30.3だった。これは今回の悪性バージョンを避けるために案内された番号で、今後もそのまま固定し続ける推奨ではない。現在のサポートと後続の修正を確認して選ぶ。 再発を考えるとき、lockfileは必要な記録になる。ただし、悪性バージョンを含むlockfileを固定すれば、その内容を再現することにもなる。npm ciがlockfileどおりに導入することと、そこにある配布物が安全であることは別だ。依存名、解決されたバージョン、取得元と時点も確かめたい。npm ciの公式仕様 導入時スクリプトを抑える--ignore-scriptsも対策の一つになるが、既に実行されたコードを取り消す機能ではない。使っているnpmのバージョンと設定、必要な生成処理やビルドへの影響を確認して採用し、通常のアプリ実行時に動くコードへの対策まで済んだとは考えない。npm auditも既知の脆弱性情報との照合が中心で、「結果がゼロだから未知の改ざんもない」という保証にはならない。何を実行させるかという設定と、何を検知したかという結果を分けて使う。npm CLI v11のスクリプト抑止設定、npm auditの公式仕様 この事件で問われたのは、HTTPクライアントをどのバージョンへ直すかだけではなかった。いつもの依存を導入する作業で、どのコードが、どの端末の、どの権限を使うのか。Webサービスの公開前にも守る場所があることを、具体的に突きつける事例だった。 Chromeと運用者の端末 公開サーバーやCIを点検していると、作業に使うブラウザーは背景に回りやすい。でも、そのブラウザーから管理画面を開き、クラウドへログインし、リポジトリーの設定も変えている。サーバーの更新と並べて、普段使う端末側にも確認項目を持っておきたい。 悪用確認と分かっていない範囲 Googleは2026年6月8日のChrome Stable更新で、V8の範囲外メモリーアクセスに関するCVE-2026-11645を修正した。同じ告知の中で、実環境にexploitが存在することを認識していると説明している。修正前から悪用の情報がある問題として、手元の適用状況も確認したい事例だ。Googleの6月8日の告知 ただ、この告知だけでは、誰がどのページへ誘導され、どこまで侵害されたかという攻撃全体の詳細は分からない。V8の一つの不備を、そのまま端末のOS全体の権限取得と説明したり、利用者全員の被害へ広げたりはできない。ブラウザーの処理、ほかの防御、攻撃の組み合わせは区別する。 解説図:管理対象には公開サーバーへアクセスする人のブラウザーも含まれる。特定の攻撃連鎖を再現した図ではない。 ダウンロードと適用を確かめる このとき案内されたバージョンはWindows・Mac向け149.0.7827.102/.103、Linux向け149.0.7827.102だった。これは6月の修正境界で、10月末に149を導入する推奨ではない。10月29日の公式告知では、Stable/Extended Stableの配布バージョンは既に別の156系列になっている。番号だけを抜き出すと、古い安全情報を新しい推奨として伝えてしまう。10月29日の公式告知 Chromeの公式ヘルプでは、通常はバックグラウンドで更新が進み、適用には再起動が必要になると説明されている。「自動更新だから大丈夫」と記憶していても、ブラウザーを長く開きっぱなしにしていれば、再起動待ちの更新が残る場合がある。Google Chromeを更新する WindowsのChromeなら、メニューの「ヘルプ」から「Google Chromeについて」を開き、更新状況を確認する。再起動が案内されていれば作業中の内容を確認して再起動し、もう一度その画面で稼働しているバージョンを見る。企業の管理下にある端末では、配信設定や利用チャネルを管理する担当とも確認する。 解説図:更新が提供されたこと、取得されたこと、手元で適用されたことを分けて確認する。 サーバー担当だけで対応表を閉じると、この作業の持ち主が抜けることがある。開発端末、運用用端末、共有端末を誰が更新するのか。ブラウザーの更新履歴を、製品ニュースと自分の端末をつなぐ小さな確認として扱いたい。 関連事例を同じ箱に入れない 本文の12事例以外にも候補を比較した。ここでは対応の違いを読み取れる例を短く挙げる。同じ期間の話でも、CVEのあるソフトウェアの不備と、アカウントや配布物そのものの侵害は区別しておく。 公開する機能によって変わる条件 Cisco AsyncOSのCVE-2025-20393では、脆弱なバージョンに加えて、Spam Quarantineが有効で、インターネットから到達できることが攻撃キャンペーンの対象条件だった。初報の2025年12月17日と、2026年1月15日の修正版追加も区別する。初報の「修正なし」を、いつまでも現在の状態として読むと対応を誤る。Ciscoの公式告知 FortiWebのCVE-2025-64446では、防御製品自身の管理画面が問題になり、CISAは更新後にも不正管理者や設定変更を確認するよう案内した。Ivanti EPMMでは当初のRPMによる暫定修正について、製品を更新したあとに再適用が必要となる条件が示された。対策を入れた瞬間だけでなく、その後の変更で何が残るかも確認する話だ。CISAのFortiWeb告知、CERT-EUのIvanti EPMM勧告 期間の終わりに近い例では、Ivanti Connect Secureに関する10月30日の政府機関の追報がある。CVE-2026-104935、CVE-2026-111357、CVE-2026-118527の連鎖による悪用を伝え、対応先を更新している。10月13日の最初の告知だけを読んで作った表では、後から説明された連鎖全体を扱えない。単独の権限昇格の問題と、組み合わせた侵入の話も分けて読む必要がある。NHS Englandの追報、カナダ政府の更新 依存パッケージの侵害 2025年11月のShai-Hulud 2.0では、Postmanが依存パッケージから自動ビルドと公開権限へ影響が広がった経緯を公表している。トークンの失効、公開権限の絞り込み、認証方法の見直しなど、当事者が何を変えたかを読むと、依存の更新とビルドの権限がつながって見える。Postmanの原因分析 同社の説明では17の公開npmパッケージに波及した一方、PostmanのWeb・クライアントアプリや本番システムは感染しなかった。公開パッケージの侵害を、そのままPostman本体の侵害と読み替えない。 Shai-HuludやAxios、LiteLLMをCVE件数へ足して「脆弱性が何件起きた」と数えると、何を比較したか分からなくなる。共通して考えられるのは、信頼して実行したものが何へ届くかと、そこで利用できた秘密情報をどう扱うかだ。事件の分類は残したまま、運用上の問いを共有する方が理解しやすい。 npmの依存とは別に、Node.js本体も更新する 10月21日のNode.jsの修正には、Brotli展開処理のCVE-2026-111497もあった。攻撃者が渡した圧縮データをアプリがnode:zlibで展開する場合、メモリー破壊からクラッシュ、情報露出、コード実行につながる可能性がある。影響は22・24・26系列で、当該修正は22.23.4、24.22.1、26.12.1に入った。Node.jsを使うすべてのアプリが、この経路から攻撃を受けるという意味ではない。Node.jsの公式リリース Notionは同日、コア製品の修正と本番への展開を完了したと公表した。npmパッケージの更新だけで対応を閉じず、コンテナや実行基盤に含まれるNode.jsも確認する理由になる。これらの資料から実悪用までは確認できない。Notionの対応記録 優先順位を決めるための確認 12事例を並べると、深刻度の数字だけでは作業順を決められないことが見えてくる。認証前に届く処理なのか、特定の機能を有効にしたときなのか、編集権限が必要なのか。どこから届き、どの権限まで使えるかで、自分の環境への影響は変わる。 最初の確認では製品とバージョンを見つける。次に、該当する機能と設定、インターネットからの到達性を確かめる。そこへ実際の悪用の情報と、届く先のデータや認証情報を合わせると、先に扱う環境を絞りやすくなる。 解説図:同じCVEでも、自分の環境の機能・公開範囲・権限によって、対応を急ぐ理由が変わる。 まず担当と対象をつなぐ たとえば、外部公開したAIフローと、閉じた検証環境の同じ製品を一つの行にまとめると、どちらを先に直すかが見えにくい。公開していないから一切のリスクがない、という意味ではない。前提を分けて記録し、正規の利用者や、既に内部へ届いている相手からの経路も検討する。 確認結果を残すなら、「更新済み」だけで終わらせず、次のような項目を一緒に持ちたい。 残す内容 後で判断しやすくなること 製品名、系列、稼働しているバージョン 別系列や別製品の告知を取り違えない 該当機能、設定、公開範囲 成立条件と実環境を対応させる 対象CVE・事件名と参照した告知の更新日 追加修正や訂正が来たときに追い直せる 担当者と管理サービスの範囲 提供側と利用側の残作業を分ける 取得したログと保存先 更新や再構築のあとも調査へ戻れる 認証情報の交換範囲と完了確認 アプリの更新だけで作業を閉じない この一覧を作るために、最初から大きな専用システムが必要なわけではない。手元の運用記録へ、何を見て判断したかを残すところから始められる。次の担当者が同じ環境を見つけ、追加告知を照合できる記録にする。 修正版の数字を読む この記事でも、複数のバージョン番号が並んだ。数字には「初回の修正が入ったバージョン」「当時の一時的な退避先」「今、保守されている系列のバージョン」という違いがある。Trivyのような配布物の侵害では、配布元や取得時刻も加わる。数字が一つ一致しただけで、同じ状態とは判断しにくい。 たとえば、古い対応記事のバージョンへ更新して、その問題の修正境界を越えたとしても、あとで公表された別の問題が残っていることがある。逆に、メジャーバージョンを無条件に上げると、アプリや連携先との互換性の確認が必要になる。利用中の系列、サポート期間、後続の告知、推奨されるアップグレード経路を見て選ぶ部分だ。 だから運用記録には数字だけでなく参照した告知を残す。次に見直す人が「このバージョンにしたのは、この問題に対応するためだった」と読めれば、後続の修正との関係を調べ直せる。次の担当者にも更新の理由と残った確認を伝えられる。 止める機能と残す機能を決める 暫定策として「公開フォームを止める」「統計機能を無効にする」「SSOを止める」といった選択が出てくる。ただ、同じ停止でも影響は違う。問い合わせが受け付けられなくなるのか、分析を見られなくなるのか、管理者が装置へ入れなくなるのか。脆弱性の条件だけでなく、使っている機能から考えたい。 前回のWordPress対応で連絡窓口を残すことを優先したのも、止めるだけでは利用者の用事が消えないからだった。今回の事例でも、一時的に閉じるなら、代わりの連絡方法や管理経路、復旧後の確認方法までつなげて考えられる。 委託先やサービス提供元へ問い合わせる場合も、「影響はありますか」から一歩具体的にできる。対象の製品・バージョン・機能を示し、修正は提供側で適用するのか、利用者が更新するのかを聞く。侵害の可能性があるなら、ログをどこまで取得でき、どの認証情報が確認対象になるかも合わせて確かめる。 対応を終えるための確認 パッチを入れたことは、対応の中で確かに大きな結果だ。ただ、ここまでの事例では、パッチが直すものと、別に処置するものが具体的に分かれていた。既に作られた管理者、使える状態のセッション、持ち出された可能性のある認証情報は、アプリのバージョンが変わっただけでは消えない。 解説図:何を確認して対応を終えたのかを分けて残す。一つの成功を、すべての作業の完了へ広げない。 修正したことと動いていること Axiosのように導入時のコードが問題になった環境では、クリーンな依存へ戻したことに加え、実行した端末・CIと秘密情報への対処を確認する。Reactのようなデプロイを伴う環境なら、依存の変更が稼働中の成果物へ反映されたかを確認する。WordPressの自動更新なら、配信対象になっただけでなく、実際にバージョンが上がったかを見る。Chromeなら、取得した更新を再起動で適用し、表示されたバージョンを確かめる。 更新後に通常の機能が動くことも、利用者のために必要な確認だ。ログイン画面が開くだけでなく、公開フォームの送信、管理画面での更新、必要なバッチや連携まで、対策のために止めた機能と、その影響を受ける範囲が動くかを確かめる。変更した場所と使い続ける機能を結びつけておくと、確認する理由も説明しやすい。 侵害が疑われるときの扱い 悪用が確認された脆弱性を使っていたからといって、すべての環境が侵害されたと決めつけることはできない。同時に、不審なログをすぐ見つけられなかっただけで、未侵害と断定することもできない。保存期間やログの種類によって、調べられる範囲は変わる。 SiteGuardのように更新で痕跡が失われる可能性が示される場合は、その案内に沿って先に保存する。FortiCloud SSOで侵害の兆候があるなら、装置の設定と関連する秘密情報まで扱う。Metabaseなら接続先DBにも調査が続く。対象の環境に合わせ、製品ごとの公式な調査・復旧案内に沿って進める。 バックアップも取得した事実と復旧に使えることを分けて扱う。戻す時点が既に侵害後だったり、ファイルとDBの世代が合っていなかったりすれば、戻したあとに別の問題が残る。必要なデータが戻り、修正も適用され、正常な利用へ戻れる状態を確認して初めて、復旧について具体的に話せる。 読み続けるための小さな運用 一次資料は初報で終わらない。Metabaseのように侵害後の点検が案内されることもあれば、FortiCloud SSOのように対象範囲が訂正されることもある。Reactのように、当初のRCEとは別の追加修正が続くこともある。初報の数字を一度転記して終わると、こうした変更を拾いにくい。 使っている製品の公式セキュリティ情報を決めておき、緊急の連絡先と通常の見直しの機会を持つ。告知を読む人、稼働バージョンを調べる人、業務への影響を判断する人が別なら、誰が誰へ結果を伝えるかを決める。ひとりで運用していても、どの知らせを見たら何を確認するかを残しておくと、次のニュースから作業へ入りやすくなる。 PHP2Shellのときに感じた、設定を一つずつ調べ直すことで理解と意識が深まる感覚は、今回の12事例にもつながっている。製品名を増やして読むと、同じ「更新」という言葉の後ろに、違う仕事があることが見えてきた。 次に脆弱性のニュースを見たときは、自分が使っているかを調べ、その構成で問題が成立する条件を読み、修正を適用したあとに残る確認へ進む。すべてを暗記するより、この順で資料を読めるようになりたい。定期的に見直しながら、何を守り、何を使い続けるための設定なのかを、もう少し具体的に説明できるようにしていく。

  9. actions.lock を試した。タグの force push は防げたが、別リポジトリの再利用ワークフローと --relock は素通りした 2026 年 10 月 28 日に GA になった GitHub Actions のロックファイル(actions.lock)を、自分で用意したアクションのタグを実際に force push して試しました。 - ロックしたワークフローは、タグを別のコミットに動かされても、ロックしたコミットのまま動きました。アクションの中で使っているアクションも同じです。 - タグを、ロックしたコミットから辿れない履歴に付け替えられると、ワークフローはエラーで止まり、どちらのコードも動きませんでした。 - 一方で、次の 3 つは素通りしました。 - ロックファイルに載っていない新しいワークフローは、警告なしで動かされた先のコミットを実行した - 別のリポジトリの再利用ワークフロー(jobs.<id>.uses)は、ロック済みのワークフローから呼んでも、動かされた先を実行した - gh actions-lock --relock は「タグが動いた」と警告を出したうえで、動かされた先のコミットにロックを進め、終了コード 0 で終わった actions.lock を入れようとしている人と、入れたあとの更新や CI での確認の手順を決めたい人向けです。試した手順、結果、入れるときにやることをまとめました。 actions.lock の紹介と導入手順は GitHub Actions で checkout@v7 のようなバージョン指定を書くのはやめよう!時代は actions.lock! に分かりやすくまとまっています。この記事は、その先の「実際に攻撃されたときに何が起きるか」を確かめたものです。 対象と前提 - gh actions-lock 拡張 v0.4.0、ロックファイルの形式 v0.0.3 - 2026 年 10 月 31 日、GitHub.com の Free プラン、ubuntu-24.04 のランナー - gh actions-lock は手元では動かさず、使い捨てのランナーの上で動かしました - 試したリポジトリは公開しているので、実行のログもそのまま見られます - アクションの側(タグを force push する): OTA-EITA/actions-lock-lab-action - 使う側(ロックファイルを置く): OTA-EITA/actions-lock-lab 背景には、2026 年 3 月 19 日に aquasecurity/trivy-action の 77 個のバージョンのタグのうち 76 個が、認証情報を盗むコードに force push で書き換えられた事件があります(GHSA-69fq-xp46-6x23)。タグで指定していたワークフローは、約 12 時間、書き換えられたコードを動かしていました。 試したこと アクションの側は、OUTER_MARKER を出す composite アクションです。中で同じリポジトリの inner@v1 を呼び、こちらは INNER_MARKER を出します。どのコミットが動いたかは、この 2 つの値で分かります。 runs: using: composite steps: - shell: bash run: echo "OUTER_MARKER=A" - uses: OTA-EITA/actions-lock-lab-action/inner@v1 使う側は、ただこのアクションを呼ぶだけのワークフローです。 on: workflow_dispatch permissions: {} jobs: run: runs-on: ubuntu-24.04 steps: - uses: OTA-EITA/actions-lock-lab-action@v1 手順は次のとおりです。 1. 版 A(289fb71)に v1 のタグを付ける 2. 使う側で gh actions-lock を実行し、できたロックファイルを commit する 3. 版 B(875663c、A の上に積んだコミット)を作り、v1 を force push で B に動かす 4. ワークフローを動かし、どのコミットが動いたかを見る ロックファイルはこうなりました(一部)。 version: 'v0.0.3' workflows: '.github/workflows/use-action.yml': - 'ota-eita/actions-lock-lab-action@v1' dependencies: 'ota-eita/actions-lock-lab-action@v1': ref: 'v1' commit: 'sha1-289fb71b6ad20503e1a75480232a9ea0277cd855' 結果 | # | 試したこと | 動いたコミット | 結果 | |---|---|---|---| | E2 | v1 を B に動かして、ロック済みのワークフローを実行 | A | 守られた。中の inner@v1 も A | | E2 | 同じリポジトリの再利用ワークフロー(./.github/workflows/…)経由 | A | 守られた | | E9 | v1 を A から辿れない別の履歴 C に動かして実行 | なし | エラーで止まった | | E3 | ロックファイルにない新しいワークフローで @v1 を使う | B | 素通り。警告もなし | | E8 | 別リポジトリの再利用ワークフロー …/remote.yml@v2 を、v2 を動かしてから呼ぶ | B | 素通り。ロックファイルにも載らない | | E4 | ロック済みのワークフローに、ロックしていないアクションを足す | なし | 起動できない(422) | | E5 | gh actions-lock --verify | なし | E3 と E4 を検出して終了コード 1。タグが動いたことは報告しない | | E6 | gh actions-lock(通常の再生成) | なし | 既存の行は A のまま。タグが動いたことは報告しない | | E7 | gh actions-lock --relock | なし | 「タグが動いた」と警告したうえで B に進め、終了コード 0 | タグを動かされても、ロックしたコミットが動いた(E2) v1 が B を指している状態でロック済みのワークフローを動かすと、ログの最初にこう出て、A がダウンロードされました。 Using locked action versions from the workflow's lockfile Download action repository 'OTA-EITA/actions-lock-lab-action@v1' (SHA:289fb71b6ad20503e1a75480232a9ea0277cd855) OUTER_MARKER=A INNER_MARKER=A 中で呼んでいる inner@v1 は、ロックファイルに別の行として載っていませんが、A のコミットのものが動きました。同じリポジトリの再利用ワークフローを経由しても同じです。 辿れない履歴に付け替えられると、止まった(E9) 攻撃者は、元のコミットの上に積むとは限りません。v1 を A と無関係の履歴 C に付け替えると、ロック済みのワークフローは次のエラーで止まりました。 ##[error]Lockfile pin 289fb71b6ad20503e1a75480232a9ea0277cd855 for `ota-eita/actions-lock-lab-action` does not match ref `v1`. Ensure the pinned commit exists on the expected branch or tag. ドキュメントには、ロックしたコミットは記録したタグやブランチから辿れる必要があり、辿れなくなったものは実行時に拒否されると書かれています。そのとおりの動きで、攻撃者のコードも元のコードも動かずに止まります。安全側ですが、上流がまっとうな理由で履歴を書き換えたときも、同じように止まります。 新しいワークフローは、ロックし直すまで守られない(E3) ロックファイルを作ったあとに、同じ @v1 を使うワークフローを 1 本足しました。ロックし直さずに動かすと、警告もなく B が動きました。 Download action repository 'OTA-EITA/actions-lock-lab-action@v1' (SHA:875663c7885e676528d7f888745932fec4d63a0e) OUTER_MARKER=B ロックファイルは「載っているワークフロー」にだけ効きます。ドキュメントにも、ワークフローは 1 本ずつでもまとめてでも onboard できる、とあります。載っていないワークフローは、これまでどおりタグで解決されます。 別リポジトリの再利用ワークフローは、ロックの外(E8) 別リポジトリの再利用ワークフローを jobs.<id>.uses で呼ぶワークフローをロックすると、そのワークフローの行は空([])になり、警告も出ませんでした。v2 を動かしてから実行すると、動かされた先がそのまま動きました。 Uses: OTA-EITA/actions-lock-lab-action/.github/workflows/remote.yml@refs/tags/v2 (6e74cf98180d2b9bba393e9fc1fb4493c5f9f040) REMOTE_MARKER=B ドキュメントにも、ロックファイルは再利用ワークフローの呼び出しを固定しないので、フルのコミット SHA で固定する、と書かれています。 --relock は、動いたタグに警告を出しつつ進める(E7) ロックを更新するための --relock を、v1 が B に動いた状態で実行しました。 warning ref-moved .github/workflows/use-action.yml ref v1 now resolves to 875663c7885e, lockfile pins 289fb71b6ad2 警告は出ますが、ロックファイルの v1 は B(875663c)に書き換わり、終了コードは 0 でした。README には「動いたピンを受け入れる」ための --accept-moved というフラグがありますが、付けなくても進みました。 更新を CI で定期的に回していると、タグを書き換えられた直後の --relock で、攻撃者のコミットをそのまま取り込むことになります。通常の再生成(E6)と --verify(E5)は、タグが動いたことを報告しませんでした。 ロックしていないアクションを足すと、起動できない(E4) ロック済みのワークフローに actions/setup-node@v6 を足して、ロックし直さずに動かそうとすると、起動の時点で弾かれました。 HTTP 422: Invalid Argument - failed to parse workflow: Invalid dependency lockfile ".github/workflows/actions.lock": workflow ".github/workflows/use-action.yml" references actions not present in the lockfile: actions/setup-node@v6 ほかのロック済みのワークフローは、この間も普通に動きました。 そのほかに分かったこと - gh actions-lock は、ロックファイルを作るだけでなく、ワークフローも書き換えます。actions/checkout@v7 は @v7.0.1 に、actions/upload-artifact@v7 は @v7.0.2 に変わりました。v1 のように semver でないタグは書き換えず、「完全な semver の参照を使う」よう info で勧めてきます。 - container: のイメージ(alpine:3)はロックされず、「digest で固定していない」と warning が出ます。 入れるときにやること - PR で gh actions-lock --verify を動かす。ロックファイルに載っていないワークフロー(E3)と、載っていないアクション(E4)を、マージ前に止められます - --relock の出力の ref-moved を確かめてから commit する。動いたタグは、上流のリリースノートやタグの履歴で、まっとうな更新か確かめます(E7) - 別リポジトリの再利用ワークフローはコミット SHA で固定する。ロックファイルでは守られません(E8) - コンテナのイメージは digest で固定する - ワークフローを足したらロックし直す。--verify を CI に入れておけば、忘れても止まります 確かめていないこと - Dependabot がアクションを更新するときに、タグが動いていたらどうなるか。Changelog には、Dependabot がロックファイルの行も同じ PR で作り直すとあります - Docker のアクション(docker:// や Dockerfile のアクション) - プライベートリポジトリのアクションと、GitHub Enterprise Server(gh actions-lock は対応していません) - ブランチ(@main など)で指定したアクションのロック 参考 - GitHub Actions workflow lockfiles are generally available(GitHub Changelog, 2026-10-28) - Workflow dependency lockfiles(GitHub Docs) - github/gh-actions-lock - GHSA-69fq-xp46-6x23: Trivy ecosystem supply chain was briefly compromised - GitHub Actions で checkout@v7 のようなバージョン指定を書くのはやめよう!時代は actions.lock!(Zenn) - OTA-EITA/actions-lock-lab、OTA-EITA/actions-lock-lab-action

  10. GitHub Actions で checkout@v7 のようなバージョン指定を書くのはやめよう! 時代は actions.lock! Progate で業務委託エンジニアをしている横江( @yokoe24 )です! セキュリティの話が重要視される昨今ですが、 みなさんは GitHub Actions の Workflow ファイルで、こんな書き方をしていませんか? steps: - uses: actions/checkout@v7 ・・・私は書いています!!🙈 この記事を書きながら、過去の個人リポジトリ、直さなきゃなぁ……って思っています。 @v7 と書くリスク npm の件などで敏感になっている方はお気付きかもしれませんが、 @v7 のような書き方は、最新の v7.x.x が使えて便利な一方1、 攻撃者が公開した、悪意のあるバージョンをインストールしてしまう危険を孕みます。 仮に actions/checkout が攻撃されて、 会社の非公開コードを攻撃者へ送信する Action になったら大変ですよね! 調べたところ、過去の事件としては 2026年3月に脆弱性スキャナー「Trivy」の GitHub Action である aquasecurity/trivy-action への攻撃があり、 (詳細: github.com/aquasecurity/trivy/security/advisories… ) 攻撃者はほとんどのバージョンタグを force push で書き換え、 認証情報を盗むマルウェアへと変貌させたことがあったそうです。 バージョンタグの中身を書き換えられているので、 仮に @v7 でなく @v7.0.1 のようにパッチバージョンまで指定していたとしても意味がなかったということです。 参考:Immutable Releases @v7.0.1 のようにパッチバージョンまで指定していたとしても意味がなかった という話を今しましたが、パッチバージョン指定が意味のある場合もあります。 それは GitHub の Immutable Releases の機能を使っている場合です。 この機能を使って公開されたリリースと同じタグ名を使ってリリースすることはできません。 github.com/aquasecurity/trivy-action/releases/tag… 先述した trivy-action ではこの機能が使われ、上の画像のように Immutable の印が付いていますが、 残念ながら actions/checkout では、2026年10月29日現在、この機能は使われていません。 (GitHub がメンテナンスしていると思っていたので、機能を活用していないのは意外) じゃあどうするか? 解決方法は2つあります! コミットのハッシュ値(SHA)を指定する方法と、lockfile を使う方法です。 GitHub の公式ドキュメントでも、 ロックファイルを使って固定するか、導入できない場合はコミット SHA を固定するかを案内しています。 解決策1:コミット SHA で固定する 完全な長さのコミット SHA を指定する方法から書きます。 こうなります。 steps: - uses: actions/checkout@3d3c42e5aac5ba805825da76410c181273ba90b1 # v7.0.1 長いですね!!! 「完全な長さの」と言われているように、 3d3c42 などと省略せずハッシュ値全体を書くのがポイントです。 たまたま別のものと前方一致するといけませんからね。 これであれば、あとから v7.0.1 のタグが別のコミットへ付け替えられても、その変更には追従しません。 解決策2:ロックファイル ( actions.lock ) を使う これは2026年10月14日にパブリックプレビューが発表され、 10月28日に一般提供(GA)となったばかりのアツアツな(?)機能です!🔥 公式ドキュメントで『最善の対策』とも言っています。 全体の作りとしては、 Workflow ファイルにバージョン番号を書き、 コミット SHA はロックファイル側に書かれる仕組みです。 ロックファイルは .github/workflows/actions.lock に置かれます。 Workflow 側 steps: - uses: actions/checkout@v7.0.1 actions.lock 側 dependencies: 'actions/checkout@v7.0.1': ref: 'v7.0.1' commit: 'sha1-3d3c42e5aac5ba805825da76410c181273ba90b1' ただ、これを見ると、 結局ハッシュが書かれるなら、 uses: actions/checkout@3d3c42e5aac5ba805825da76410c181273ba90b1 # v7.0.1 の書き方でも良くない?! ファイルが2つに分かれてむしろ読みにくくなってない?! ……って思いますよね? そう思ったのでAIに聞いてみたところ、 Action の内部で、さらに別の Action が使われている場合に、その依存先まで固定できることが肝要と知りました! 先述した trivy-action の件、実は私たち使用者が - uses: aquasecurity/trivy-action@915b19bbe73b92a6cf82a1bc12b087c9a19a5fe2 # v0.28.0 のような書き方をしていたとしても、事件当時、trivy-action の内部では uses: aquasecurity/setup-trivy@v0.2.1 と書かれていたため、 setup-trivy が改ざんされるだけで被害に巻き込まれる脆弱さがありました。 github.com/aquasecurity/trivy-action/blob/v0.28.0… lockfile の場合、内部の Action への参照もたどり、それぞれのコミットハッシュを記録してくれるため、 このような問題にも対処できるのだそうです! つよい!💪💪 実際にロックファイルを作って見てみましょう。 actions.lock を作ってみる! gh コマンドのインストールがまだなら GitHub CLI をインストールし、 gh auth login でログインしておきましょう。 その後、公式の拡張機能をインストールします。 gh extension install github/gh-actions-lock そして、リポジトリのルートで以下のコマンドを実行すれば完了です! gh actions-lock .github/workflows/ 内の Workflow が読み込まれ、 .github/workflows/actions.lock が生成されます。 また、Workflow ファイル側も以下のように具体的なバージョンへと書き換えられます。 - uses: actions/checkout@v7 - uses: actions/checkout@v7.0.1 便利ですね! @v7 のような曖昧なバージョンは許されません。 actions.lock があると GitHub Actions は "Using locked action versions from the workflow's lockfile" とメッセージを出し、 指定されたバージョンをセットアップ時にダウンロードします。 actions.lock を見てみる 複数の Workflow を用意して、バージョン違いや依存関係の記録がどうなるのか見てみましょう。 Workflow 使う Action ci.yml checkout@v7.0.1、setup-node@v6.5.0 scan.yml checkout@v6.1.0、trivy-action@0.35.0 生成される actions.lock は以下のようになります。 This file is machine-generated by gh actions-lock. Do not edit by hand; run gh actions-lock to update. Docs: gh.io version: 'v0.0.3' workflows: '.github/workflows/ci.yml': - 'actions/checkout@v7.0.1' - 'actions/setup-node@v6.5.0' '.github/workflows/scan.yml': - 'actions/checkout@v6.1.0' - 'aquasecurity/trivy-action@0.35.0' dependencies: 'actions/cache@0400d5f644dc74513175e3cd8d07132dd4860809': ref: 'v4.2.4' commit: 'sha1-0400d5f644dc74513175e3cd8d07132dd4860809' owner_id: 44036562 repo_id: 215566462 'actions/checkout@08c6903cd8c0fde910a37f88322edcfb5dd907a8': ref: 'v5.0.0' commit: 'sha1-08c6903cd8c0fde910a37f88322edcfb5dd907a8' owner_id: 44036562 repo_id: 197814629 'actions/checkout@v6.1.0': ref: 'v6.1.0' commit: 'sha1-d23441a48e516b6c34aea4fa41551a30e30af803' owner_id: 44036562 repo_id: 197814629 'actions/checkout@v7.0.1': ref: 'v7.0.1' commit: 'sha1-3d3c42e5aac5ba805825da76410c181273ba90b1' owner_id: 44036562 repo_id: 197814629 'actions/setup-node@v6.5.0': ref: 'v6.5.0' commit: 'sha1-249970729cb0ef3589644e2896645e5dc5ba9c38' owner_id: 44036562 repo_id: 189476904 'aquasecurity/setup-trivy@e6c2c5e321ed9123bda567646e2f96565e34abe1': ref: 'main' commit: 'sha1-e6c2c5e321ed9123bda567646e2f96565e34abe1' owner_id: 12783832 repo_id: 869952525 uses: - 'actions/cache@0400d5f644dc74513175e3cd8d07132dd4860809' - 'actions/checkout@08c6903cd8c0fde910a37f88322edcfb5dd907a8' 'aquasecurity/trivy-action@0.35.0': ref: '0.35.0' commit: 'sha1-57a97c7e7821a5776cebc9bb87c984fa69cba8f1' owner_id: 12783832 repo_id: 268833180 uses: - 'actions/cache@0400d5f644dc74513175e3cd8d07132dd4860809' - 'aquasecurity/setup-trivy@e6c2c5e321ed9123bda567646e2f96565e34abe1' uses の項で、その Action が依存している Action の一覧がわかりますね! バージョンアップしたくなったら? Workflow 内で使っている外部 Action のバージョンを更新する場合は、 まずは通常通りファイル内のバージョンを書き換えます。 悪意のあるバージョンへ更新しないよう、更新先のリリースノートや、更新から日が浅くないかはチェックしておきましょうね! - uses: actions/checkout@v6.0.2 - uses: actions/checkout@v6.0.3 そのあとで actions-lock コマンドを実行します。 gh actions-lock これだけでOKです! actions.lock が更新されます。 なお、 gh actions-lock を忘れて Workflow ファイルだけを更新してコミット・pushした場合、 GitHub Actions は Invalid lockfile エラーで CI を失敗させます。 まとめ: gh actions-lock を使おう! ってなわけで、 actions/checkout@v7 のような書き方のリスクと、 その対策を話してきたわけですが、まとめとしては簡単ですね! 拡張機能のインストール gh extension install github/gh-actions-lock actions.lock の作成・更新コマンド gh actions-lock github/gh-actions-lock 拡張機能を gh コマンドにインストールしたあと、 リポジトリで gh actions-lock ! これだけ! 今から出来ますね!! これだけで、サードパーティーの GitHub Action を使っていることによる 予期せぬ攻撃から身を守ることにつながります。 みんなでインターネットを守っていきましょう!!🛡️🦾 ここまでお読みくださり、ありがとうございました!💝 脚注 厳密には、メンテナーが v7 タグを最新バージョンのコミットに付け直してくれている場合に限る。たいていはありがたいことにやってくれている…… ↩︎

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