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NCCL Roadmap Nov 2026 - Jan 2027 の解説 はじめに ! NCCL 奥がふかすぎる。。。。にゃ。。。 NVIDIA が公開した NCCL Roadmap: Nov 2026 - Jan 2027 (GitHub Issue #2486) から、大規模分散学習・推論に携わるエンジニアが押さえるべきポイントを解説します。前回のロードマップの解説は「NCCL Roadmap Aug-Oct 2026 の解説」、そこで挙げた項目の現在までの実装状況は「NCCL 2.32.3 でロードマップはどう実装されたか」にあります。GIN の基本は前回の解説を前提にします。 この記事では、新しい概念の GENK と Flow、AWS EFA と GIN の現状、注目機能 2 つを扱います。調査は 2026 年 10 月 29 日に行い、まだリリースされていないコードは、staging ブランチを次のリリースの候補とみなして読んでいます。 実装状況の確かめ方 NVIDIA/nccl、aws-ofi-nccl、amazon-contributing/DeepEP、NVIDIA/nccl-extensions の公開ブランチを手元に取得し、commit の履歴とソースを読んで確かめました。PR と Issue の状態 (open か、マージされたか、閉じた日) は GitHub で確かめています。記事のソースへのリンクは、確かめたときの commit に固定しています。 NCCL は master、staging、dev の 3 本のブランチを公開していて、staging には 2.32.5-1 の版番号を付けた commit があり、その後に 2.32.6a0 に上がっています。ロードマップは「Coming Soon: NCCL 2.32 Update 1」の版番号を書いていませんが、この記事では staging のコードをその候補として読みます。 今回のロードマップの項目のうち、この記事で扱うものと、前回のロードマップの近い項目は次のとおりです。対応は筆者の読みです。 今回のロードマップの項目 前回のロードマップの近い項目 General Kernels (GENK) Unify legacy kernels using Device API Flow Device API More Device API primitives GIN Backend Improvements GIN backend improvements CFT を使う階層型カーネル Compute Fabric Transport (CFT) through Device API New Enqueue Pipeline Legacy and symmetric-kernel host-side unification ロードマップには、内部のメモリの削減、RAS の進み具合の監視、RMA の profiling など、この記事で扱わない項目もあります。 Device API とは何か NCCL の API の全体像 ロードマップの項目を説明する前に、まず背景知識として NCCL の API を整理します。NCCL の API は、Host API、Device API、plugin API の 3 つに分けられます。Host API と Device API の仕様は NCCL の公式文書にあり、この記事の表はその章立てに沿っています。plugin API は公式文書の API の章には無く、リポジトリの plugins ディレクトリに plugin の種類ごとの説明があります。 API 何をするか 例 Host API CPU から呼んで、communicator (通信に参加する GPU の集まり) の作成や集団通信を NCCL に頼みます。集団通信では、NCCL がアルゴリズムを選び、NCCL のカーネルを GPU で起動します。利用者の計算は別のカーネルです ncclCommInitRank、ncclAllReduce Device API 利用者が書いた CUDA カーネルの中から、ほかの GPU との通信を直接呼びます (2.28 から)。計算と通信を 1 つのカーネルに入れられます。使う前の準備には Host API を使います GIN、LSA plugin API NCCL のほうから呼ぶ、下の部品の差し替え口です。ネットワークへの送受信や、アルゴリズムの選択の調整などを、NCCL の外の実装に任せます net、GIN。説明は plugins にあります。aws-ofi-nccl は EFA 用の plugin 誰が NCCL を呼ぶか NCCL を呼ぶのは、多くの場合アプリ自身ではなく、間に入るフレームワークやライブラリです。主な呼び手を、ソースで確かめた範囲で並べます。 呼び手 どう呼ぶか 使う API PyTorch の torch.distributed (backend "nccl") C++ の ProcessGroupNCCL が、ncclAllReduce などを直接呼びます Host API PyTorch の backend "nccl4py" (torch.distributed._nccl4py) Python で書いた backend が、nccl4py を通して呼びます。init_process_group("nccl4py") で選びます Host API nccl4py NVIDIA の公式の Python の bindings。Cython で libnccl を呼び、PyTorch の tensor や CuPy の配列をそのまま渡せます。実験的な CuTe DSL の部品もあります 主に Host API vLLM の PyNccl Python の ctypes で libnccl を読み込んで呼びます Host API PyTorch の symmetric memory の演算、DeepEP、NCCL EP 自分の CUDA カーネルの中から通信を呼びます。準備には Host API で window (次の節で説明します) を登録し、device communicator を作ります Device API と Host API aws-ofi-nccl など NCCL のほうから呼ばれます。NCCL が EFA などのネットワークに送るときの下の部品です。InfiniBand には NCCL に組み込みの経路もあります plugin API Device API は何のためにあるか Host API で通信を頼むと、通信は NCCL のカーネル 1 回分の単位になり、利用者の計算とは別のカーネルになります。計算の途中で決まった相手に少しずつ送りたい場合や、計算と通信を細かく重ねたい場合には、この単位が粗すぎます。たとえば MoE のトークンの振り分けでは、どのトークンをどの GPU に送るかが計算の途中で決まります。 Device API は、利用者のカーネルの中から、ほかの GPU のメモリへ直接データを動かせるようにするための API です。NCCL の Device API の例は、計算と通信を分けて順に行う従来のやり方に対して、カーネルの中で両方を細かく混ぜることで、待ち時間を減らし処理量を上げられると説明しています。 GPU のカーネルからほかの GPU に届く経路はいくつかあり、Device API は経路ごとに部品を用意しています。同じノードで NVLink や PCIe の P2P でつながった相手には、相手のメモリを普通の読み書きの命令で触れます (LSA)。NVLink のスイッチが複数の宛先への書き込みや足し合わせを引き受けられるシステムでは、Multimem を使います。ノードをまたぐ相手には、NIC を通して put (相手のメモリへの書き込み) や get (相手のメモリからの読み出し) を出します (GIN)。どちらも、相手が何も呼ばない片側通信です。CFT は、相手のメモリを番地 (ポインタ) で触る代わりに、CUDA が用意する宛先の番号 (logical endpoint) とオフセットを指定して put や get を出す部品で、Blackwell 以降の GPU で使えます。これらと組み合わせて使う、足し合わせやコピーの部品 (reduce と copy) も用意されています。 GIN の仕組みは、前回の解説の「GIN とは何か」で説明しました。LSA は後の GENK と Flow の節で、CFT は注目機能の節で扱います。Multimem と reduce と copy の部品は、この記事では詳しく扱いません。 どの部品を使う場合も、準備は利用者が CPU で Host API を呼んで行います。通信に使うバッファを、全ランクで同じ形に対応付けた領域 (symmetric memory window) として登録し、カーネルが使う資源を指定して device communicator を作り、それを渡して自分のカーネルを起動します。手順の例は NCCL の文書にあります。GIN を使うカーネルは、NCCL を更新したら作り直す必要があると文書は書いています。次の節からは、この Device API の上に加わる新しい部品とカーネルを見ていきます。 GENK と Flow とは何か ! GENK と Flow は、まだリリースされておらず staging と dev にだけあるコードです。この節は staging の実装から読み取った内容で、リリースまでに変わる可能性があります。staging で試すには、ビルドのときに SYM_GENK=1 を指定し、実行のときに NCCL_SYM_GENK_ENABLE=1 を設定する必要があります。 概要 Flow は、前の節の LSA と GIN の上に作られた、集団通信の部品を提供する Device API です。ロードマップは Flow を「LSA と GIN の両方で動く、高水準の Device API」と説明しています。LSA は前の節で触れた、相手の GPU のメモリを普通の読み書きの命令で触る部品です。 GENK (General Kernels) は、NCCL が自分の Ring と Tree の集団通信を、この Flow の上で作り直したカーネルの一群です。Ring では AllGather、ReduceScatter、Broadcast、Reduce、AllReduce を、Tree では AllReduce を実装しています。 前回のロードマップには「Unify legacy kernels using Device API」という項目がありました。筆者は、GENK をこの項目につながる取り組みと読んでいます。今回のロードマップは、選んだプラットフォームで GENK を既定にし、古いカーネルを置き換えるとしています。あわせて性能モデルを 1 つにまとめ、どの実装を選ぶかを同じ物差しで決めるとしています。 staging では、NCCL 自身が同じ Flow で集団通信を組んでいます。Flow がリリースに入れば、利用者も NCCL の内部と同じ部品で通信カーネルを書けます。 NCCL の集団通信には、GENK の前から 2 種類のカーネルがあります。 legacy kernels: NCCL に最初からある Ring や Tree のカーネルです。経路の違いは、CPU の側が準備する transport (NVLink や PCIe の P2P、ネットワークなど) が受け持ち、ネットワークでは CPU の proxy スレッドが NIC に渡します。 symmetric カーネル: 全ランクが同じ形で登録したバッファ (symmetric memory window) を集団通信に渡したときに使える、新しいカーネルです。相手のバッファの番地が分かるので、Device API の LSA などで相手のメモリを直接読み書きします。いまあるものは、NVLink の直結を前提に、場面ごとに作り込まれています (表の「特化した symmetric カーネル」)。 GENK は、symmetric カーネルと同じ Device API の作りで、legacy kernels と同じくらい広い経路で動くものです。Ring で隣の GPU にデータを渡す場面で比べると、次のようになります。 隣の GPU との経路 legacy kernels 特化した symmetric カーネル GENK NVLink 動く 動く 動く (LSA) PCIe の P2P 動く 使えない 動く (LSA) 別のノード (ネットワーク) 動く 一部の種類だけ動く (GIN) 動く (GIN) 表は、Hopper 以降の GPU で GENK を有効にした場合についてソースから読んだもので、動かして確かめたものではありません。PCIe の行は CUDA P2P が使える場合、GENK のネットワークの行は GIN Proxy (GPU の代わりに CPU のスレッドが NIC に送る GIN のバックエンド) が使える場合です。 特化した symmetric カーネルは、PCIe だけでつながったノードでは候補から外れます。GENK では、隣の GPU ごとに Flow が LSA か GIN かを実行時に選ぶので、同じカーネルのまま NVLink でも PCIe でもネットワークでも動きます。staging のカーネルの選択にも「特化したカーネルは NVLink の直結を要するが、GENK は CUDA P2P の LSA や GIN も使える」というコメントがあります。 利用者の側の例もあります。NCCL の Device API の例には、Transformer の RMSNorm の計算を ReduceScatter と AllGather の通信と 1 つのカーネルにまとめるものがあり、いまは LSA、Multimem、GIN を直接使って、受け取り、足し合わせ、送り出しを書いています。Flow は、NCCL 自身が集団通信に使うこの受け取り、足し合わせ、送り出しの部分を、部品として提供します。 NCCL の文書の Device API の章には、Flow と GENK の説明はまだありません。Flow の使い方は、ヘッダの説明にまとまっていて、Flow processor を足した commit が入口になります。GENK は、カーネルを足した commit と、NCCL の選択に組み込んだ commit が出発点です。 図で [API] のタグを付けた Flow processor、LSA connection、GIN connection は、アプリのカーネルからも呼べる Device API です。cost model、legacy kernels、specialized symmetric kernels、GENK は NCCL の中の部品です。 GIN の signal とは GIN の put は片側通信で、受け手は何も呼ばないので、データがいつ届いたかを自分では知れません。signal は、それを知らせるための、受け手の側に置かれた数です。送り手が put に signal を付けると、データが届いたあとに受け手の数が増え (たとえば 1 増え)、受け手はその数が目標に達するまで待ってから読みます。GIN の基本は、前回の解説の「GIN とは何か」で説明しました。 signal には strong と weak の 2 種類があります。weak signal が「読んでよい」と約束するのは、その signal を付けた put のデータだけです。strong signal は、同じ相手に同じ context (GIN の通信の通り道の 1 本) で先に出した put のデータもすべて読めると約束します。そのため、最後の put にだけ signal を付ければ済みます。 EFA の送り方の SRD は、書き込みが届く順番を保ちません。そのため、最後の put に付けた signal が届いても、前の put のデータが届いたとは限りません。EFA の上の経路のうち、GPU から直接送る EFA GDA が提供するのは weak signal だけです (次の節で説明します)。一方、Flow の GIN の接続は strong signal を必要とします。 AWS EFA 関連アップデートと現在の課題 EFA の 2 つの GIN の経路と signal の種類 ! GENK と Flow の GIN の接続は strong signal を必要とします。EFA の上で strong signal を提供するのは GIN Proxy だけで、GPU から直接送る EFA GDA は weak signal しか提供しません。そのため、EFA の複数ノードで GENK を使うなら Proxy の経路になります。 EFA で GIN を使うときは、使う経路 (GIN のバックエンド) が、カーネルの必要とする種類の signal を提供するかを先に確かめます。NCCL は、カーネルが求める種類の signal を提供できないバックエンドを使わず、提供できる別のバックエンドがあればそちらに切り替え、無ければエラーにすると説明しています。EFA で使う GIN の経路として、ここでは 2 つを比べます。1 つは NCCL の GIN Proxy で、CPU のスレッドが aws-ofi-nccl の RMA の機能を通して EFA に送ります。もう 1 つは EFA GDA で、GPU のカーネルが EFA の送信キューに直接依頼を書きます。aws-ofi-nccl の文書によると、EFA GDA は NCCL_GIN_TYPE=5 で明示したときに使われます。同じ文書は、明示しなければ NCCL 2.31 は EFA で Proxy を使うと書いています。インスタンスやドライバなどの要件も同じ文書にあります。 2 つの経路は、提供する signal が違います。NCCL の Proxy は、strong signal と VA signal (登録した仮想アドレスに置く signal) を使えると報告します。EFA GDA については、aws-ofi-nccl が strong signal も VA signal も使えないと報告し、NCCL の側も番号で指す indexed signal だけを受け付けます。EFA GDA の signal は、EFA の NIC が届いた書き込みを数えるカウンタで作られています。aws-ofi-nccl の文書は、signal と counter の合計が EFA のデバイスあたり 512 個までであることも、制限に挙げています。 図の矢印は、使い手が必要とする signal をバックエンドが提供するかを示します。矢印はソースと文書から描いたもので、どの経路が選ばれるかや、動かした結果を示すものではありません。図の DeepEP の ordered は届く順番を前提にする上流のカーネル、unordered は順番を前提にしない amazon-contributing のフォークのカーネルです。 GENK はノードをまたぐ通信に使う GIN のバックエンドとして Proxy を指定しているので、staging のコードを読む限り、GENK が EFA の上で複数ノードの通信をするなら Proxy の経路を通ります。一方、aws-ofi-nccl の文書は、EFA GDA を使うときに symmetric の GIN カーネルを無効にするよう書いていて、この設定 (NCCL_SYM_GIN_KERNELS_ENABLE=0) にすると複数ノードの GENK は候補から外れます。つまり、EFA GDA を使う設定 (NCCL_GIN_TYPE=5 と NCCL_SYM_GIN_KERNELS_ENABLE=0) では複数ノードの GENK は使われず、複数ノードで GENK を試すときは、この 2 つの環境変数を設定せずに Proxy の経路で動かします。 aws-ofi-nccl v1.22.0 で、EFA GDA の Get がタグの付いた版で使えるようになった Get は、GPU のカーネルが、ほかの GPU のメモリの中身を、持ち主に何もさせずに読み出す操作です。たとえば、手元の番号を見て、ほかの GPU が持つ表の行を取り出すような使い方ができます。Get の意義は「NCCL 2.32.3 でロードマップはどう実装されたか」で説明しました。 その記事の時点では、NCCL 2.32.3 には Get が入っていましたが、aws-ofi-nccl の側の対応はタグの無い master にしかありませんでした。2026 年 10 月 22 日 (日本時間) の v1.22.0 は、NCCL 2.32 が使うキューの形への対応と、Get の完了を数える修正を含む最初のタグです。これで、NCCL 2.32 と aws-ofi-nccl v1.22.0 という、タグの付いた版どうしに、EFA GDA の Get に要る変更がそろいました。v1.22.0 のリリースノートは Get に触れておらず、筆者は動かして確かめていません。 ただし、EFA GDA の Get には、完了を知らせる signal や counter を付けられません。読み出しが終わったかは、出した依頼をまとめて待つ Flush で確かめます。 MoE の通信ライブラリ (DeepEP と NCCL EP) の動き MoE のトークンを担当の expert に配り (dispatch)、計算結果を集める (combine) 通信のライブラリにも動きがありました。DeepEP と NCCL EP はこの同じ役割の候補で、どちらも下で NCCL を使います。DeepEP は 2026 年 9 月 29 日の V2.5 で NVSHMEM への依存を取り除き、ノードをまたぐ通信は NCCL の GIN だけになりました。要件は NCCL 2.32.3 以降です。EFA で DeepEP を動かす取り組みは amazon-contributing/DeepEP のフォークにあり、その詳細は別の記事で整理してみます。 NVIDIA の NCCL EP は NVIDIA/nccl-extensions に移り、NCCL の staging からは、nccl_ep と nccl_m2n のディレクトリが消されました。 注目機能 2 選 CFT を使う階層型カーネル CFT (Compute Fabric Transport) は NCCL 2.31 で Device API に加わった部品で、嬉しさは 2 つあります。1 つ目は、カーネルから直接届く相手を、LSA の範囲より広げられる見込みがあることです。LSA で届く相手は、CUDA P2P で相手のメモリを普通の読み書きの命令で触れる相手 (LSA team) に限られます。CFT は相手を番地ではなく CUDA が配る宛先の番号で指すので、届く範囲は、CUDA が「この番号で届く」と報告する範囲で決まります。前回のロードマップも、CFT を、logical endpoint で届く範囲の相手を宛先の番号で指す通信の形と説明していました。ただし、リリースされた版では、CFT で届く相手の集まり (CFT team) の大きさは既定で LSA team と同じです。 2 つ目は、受け手に届いたことを早く知らせる書き込みがあることです。CFT の普通の put や reduce で受け手に知らせるときは、データを書いたあと、書き込みの完了を確定させ (fence)、合図のフラグを書きます。これが counted な書き込みで、フラグの代わりに、NCCL_WIN_CFT_COUNTED を付けて登録した window の中のカウンタを使います。カウンタはデータより後に進むことが保証されているので、送り手は fence とフラグの書き込みを省けます。staging の文書は、これを低遅延のための操作と説明しています。受け手は、カウンタを見てからデータを読む間に fence を入れる必要があります。 仕組みは次のとおりです。CFT の宛先の番号は、CUDA 13.3 で加わった logical endpoint という仕組みです。NCCL は CPU の側で、宛先の番号を確保し、そこに各 GPU のバッファを結び付けておきます。カーネルは、送りたいデータを shared memory に置き、宛先の番号とオフセットを指定して put を出し、そのあと完了を確かめます。 dev では、CUDA 13.4 以降で CUDA が「logical endpoint で届く範囲」を報告すると、CFT team をその範囲から作ります。その範囲は LSA の範囲の倍数でなければならず、LSA より広い範囲を 1 つの CFT team にできる作りです。NCCL の文書は、CFT がどの物理的な経路を通るかを書いていません。NCCL EP の CFT を使う経路は、1 つの NVLink のドメインの中だけを対象にしています。 ロードマップは、この CFT を使って、AllGather、ReduceScatter、AlltoAll の階層型カーネルを作るとしています。階層型は、近い GPU の間と遠い GPU の間で通信を分ける作りで、LSA の範囲と、それより広い CFT team の範囲を使い分けることになると筆者は読んでいます。master、staging、dev を調べた範囲では、CFT の宛先の集まりの階層の種類は 2.32.3 のコードに定義されていますが、それを使う集団通信のカーネルは見当たりませんでした。 CFT とは CFT が使えるのは、ハードウェア、ドライバ、CUDA が logical endpoint と fabric 用の命令に対応したシステムだけで、例の barrier のプログラムは CUDA 13.3 と SM_100 を要件に挙げています。CFT team を CUDA の報告する範囲 (clique) から作る変更は、dev の 2026 年 9 月 28 日の commit で入り、master と staging にはまだありません。 NCCL EP には、CFT の counted な書き込みで低遅延の dispatch を送る経路が、NCCL_EP_LL_CFT=1 で選んだときだけ使われる形で、2026 年 9 月 16 日の commit から main に入っています。 New Enqueue Pipeline: 呼び出しから起動までを 3 つの層に分ける enqueue は、アプリが呼んだ集団通信や put を、カーネルやコピーの起動に変える NCCL の中の流れです。ロードマップは、これを管理 (Management)、準備 (Preparation)、スケジューリング (Scheduling) の 3 層に分け、制御の流れを簡単にし、カーネルの最適化をしやすくするとしています。 管理と準備の層を含む基本の枠組みは 2.31.2 から入っていて、その時点のスケジューリングの層は既存の経路に戻すだけでした。いまの staging と dev でも、新しい流れは既定で無効です。dev では、Preparation の tuning ですべての集団通信のアルゴリズムやプロトコルを先に選び、classification でその結果だけを使って起動の経路を振り分ける形にしました。経路ごとのスケジューラは、それぞれの仕事を stream ごとに 1 つのキューにまとめます。dev の commit では、新しい流れの symmetric のスケジューラが起動するのは特化した symmetric カーネルだけで、GENK は自分用の device communicator の準備が要るので、従来の流れの symmetric カーネルのスケジューラから起動されます。 まとめ staging の GENK は、Hopper 以降の GPU でビルドと環境変数で有効にすると NVLink、PCIe、ネットワークのどの経路でも同じカーネルが候補になり、EFA の複数ノードでは strong signal を提供する GIN Proxy の経路を使います。CFT を使う階層型カーネルは部品だけが公開コードにあり、New Enqueue Pipeline は枠組みが既定で無効のまま dev で進んでいます。